5話
「何か…手伝うよ」
「なら、レンジ鳴ったら裏返してもう1回解凍押しといて。あと、お鍋出して」
「何処にあるんだ?」
「コンロの下の扉ん中。中くらいのやつ出して、軽く水洗いしといて」
むつに言われた通りに、西原は鍋をいくつか出すと、片手鍋にするか両手鍋にするか迷っていた。
結局、片手鍋に決めたのか水で濯いで布巾で水気を拭うとコンロの上に置いた。そして、レンジがチンっと音を立てると、中に入っていた米を引っくり返して再び解凍を押した。
「お前、何か大事な事言わなかっただろ?」
ふいに言われ、むつは野菜を刻む手を止めた。包丁を置くと、西原の方を向いたむつは、ふっと苦笑いを浮かべた。
「言わない方が良い事もある」
「心配かけるから、か?」
「そうね…あとは、言った所でどうにもならない事もある。あたし社長の事だって言わなかったでしょ?2人とも聞こうともしなかった…何でだと思う?」
「お前が答えないから、だろ?」
「うん。言う時が来たら言う…大丈夫。あの2人にはあまん隠し事しないから」
「俺にはするのにか?」
「んー?聞きたい?けど、先輩昔からあまり人に干渉しない主義でしょ?」




