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1話
話が終わったのか、京井が下がると、むつと西原もしれっと姿勢を戻して座り直した。
「さて…隣に京井さん経営のバーもあるようですし、少し呑みませんか?」
「良いですね。そうしましょうか」
「玉奥さんもお付き合い頂けますか?」
宮前に食事をご馳走になっているむつは、名指しでそう言われれば断れるはずがなかった。
篠田が会計をしに行っている間に、むつがお手洗いに、と立ち上がった。すると、冬四郎と宮前も立ち上がった。
ぎょっとしたむつだったが、西原を見ると少しほっとしたような顔をしていた。
3人でぞろぞろと席を離れ、西原にも声が聞こえない辺りまで来ると、むつは宮前を見た。
「いちにぃ‼」
むつが嬉しさとちょっぴり怒りを織り混ぜたような声をあげて、いちにぃことむつと冬四郎の1番上の兄の腕を軽く叩いた。
「よ、びっくりした?冬四郎は心底、嫌そうな顔してたねぇ。何がご無沙汰だよ、白々しい。この前、会ったってぇのに」
先程のような穏やかな話し方から、がらっとくだけた話し方になった。だが、むつに対しては優しく話し掛けていた。
「びっしたよ‼警視正って知らなかったし。ねぇねぇ何でご飯に誘ってくれたの?」
「篠田君が紹介したいって言ってたのもあるし。まぁちょっとな…」




