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5話
男3人が缶ビールを呑みながら、わいわいと喋ってる間に、むつはキッチンにしばらく立ち尽くしていた。
手を握ったり開いたりを繰り返し、それからおもむろに冷蔵庫を開けた。夜も遅い時間だから、消化によくて簡単に作れる物。
むつは冷凍しておいた米と肉団子を出して、レンジで解凍し始めた。その間に、中途半端に余ってる野菜を切っていく。
「なぁ、むつ」
「うぉぉっ‼…びっくりした、何よ?」
本当に驚いたようで、むつは包丁を取り落とした。床に落とさなくて良かった。
ひょこっと顔を出した西原は、まじまじとむつを見ている。
「何?危ないじゃん、包丁持ってるのに」
「あ、あぁ、悪い悪い。けど…ちょっと2人には聞かれたくないなと思って」
西原の真剣な目から逃れるように、むつは再びまな板に向かって、包丁を動かし始めた。




