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5話
「何か…じゃりってした」
「あぁ、それ餡子をグラニュー糖で包んであるみたいだったからな。不味くはないよな」
「あまあまだね。…で、人間が支払う物は身体の1部よ。それと引き換えに願いが叶ったよ」
口の中に残った甘ったるい感じを消すように、むつはコーヒーを飲んだ。もう熱さは気にならないようだった。
「それで、沼井は動けなくなってるって事か。何度も願いを聞き届けて貰ったら最終的には…?」
「死ぬよ」
あっさりとむつが言うと、颯介と祐斗、西原でさえも動きを止めて黙った。
「…解決策は?」
「分からない」
これもはっきりと即答したむつだった。
男3人が黙ってしまうと、むつは鞄からタバコを出して吸い始めた。縛っていたヘアゴムを外して、わさわさとほどいて背中に垂らした。
「元を断てば良いんじゃないですか?」
「元は…ない。大元はね。大量発生したゴキブリにボスが居ないのと同じなの」
むつは灰皿を引き寄せて、灰皿を落とそうとしたがわずかに遅かったのか、ずれたのかテーブルに灰がこぼれた。




