5話
「距離感掴めてないの?」
「そうかも。疲れてるし、かな?」
颯介に言われ、むつはそう答えながら今度は慎重にマグカップに口をつけた。
「で、何があったの?」
「あそこ、人形浄瑠璃の劇場なのよ。んー何て言うか物語を人形を使って演じさせれるせいか、意思を持つようになっててさ」
劇場で買ってきた歌舞伎化粧模様のクッキーをつまみ、しげしげと眺めていた西原が顔を上げた。
「あ、憑喪神って事?」
「そうそう。で、それが…」
どう説明をしたら良いのかと、むつは悩んだ。下唇を撫でながら、うーんと唸っていた。
「うーん、まぁいっか。ざっくり言うと沼井の件、それが原因なわけよ。あの手紙、颯介さん覚えてる?」
颯介は頷いた。だが、祐斗と西原は首をかしげている。むつは、尻を浮かせてポケットから白い封筒を取り出して、文字が見えるようにテーブルに置いた。
「せいりつ…やっぱり成り立つって意味だったわ」
「何が成り立ったの?」
「契約よ。その憑喪神になった人形と人間との契約。人形が人の願いを叶える、人間はその願いと引き換えに代金を支払う。それが出来た時に、これが届くみたい」
「代金って、お金を払うんですか?」
饅頭を口に入れ、眉間にシワを寄せたむつは首を横に振った。




