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5話
西原にバイクの運転をして貰い、マンションに帰ってきたむつは、玄関の鍵を開けようとして少し躊躇った。それは、ほんの一瞬の事で誰も気付きはしなかった。
玄関を開けて真っ暗な部屋なのが分かると、むつはほっとしたように靴を脱いで上がるとスリッパを出した。
「ちょっと待ってね、お布団敷く」
「あ、手伝うよ。お邪魔します」
すぐに西原が申し出てくれた。むつは西原と一緒に使っていない部屋に入りクローゼットから布団を出した。
「客用の布団2組もあるのか…誰か泊まりに来たりしてんの?」
「まぁ、それなりに。友達居るし」
手早くシーツをつけた布団に、颯介と祐斗がゆっくりと山上を寝かせた。
「意識のない人って重たいんだね」
颯介の素直な感想に、むつも頷いた。そして少し前、夏の出来事を思い出して、西原の方をちらっと見た。むつの視線に気付いた西原は首を傾げていた。
「さて、と…むっちゃん。報告を今のうちにしてくれるかな?」




