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5話
「それで…社長の家ってどこ?」
山上を後部座席に押し込んだ、颯介はぱたんっとドアを閉めてむつの方を向いた。
「え、あたし知らないよ」
むつは横に首を振った。
「そうなの?俺も知らないんだけど」
「俺も知らないっすよ」
祐斗は、そうだろうね、とむつと颯介の目が言っていた。と、そこで3人は西原の方を向いた。急に3人から注目された西原は、首と手をぶんぶんと振った。
「えっ‼俺?…悪い、知らないんだ」
「って事は…?」
「誰かの家に連れてくしかない、か」
「まぁ、そうなるよねぇ。…祐斗ん所はワンルームだし、うちか颯介さん家かな?」
誰も山上を引き取るとは言い出さない状況を見て、連れてきたの自分だしと、むつは溜め息をついた。
「仕方ない、うちに運んでくれる?あ、ついでに先輩お願いがあるんだけど」
「どうした?」
「運転して」
むつは鞄からバイクの鍵を出すと、西原の手に握らせた。
「颯介さん、マンションの前で合流で」
「分かった。気を付けてね」
颯介と祐斗に手を振ると、むつは西原を連れてバイクを停めてある駐輪場に向かって歩き出した。




