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5話
むつから山上を受け取るように、颯介が山上の脇に右腕を通して、右手でベルトを掴み左手で山上の左腕を首にかけさせた。
「むっちゃん、気付いてないかもしれないけど、西原さんも一緒に来てるんだよ?」
「えっ、そうなの?どこ?」
本当に気付いていないのか、きょとんっとした顔をしていた。
「湯野さんと駆け付けてから、ずーっとお前の横に居たけどな」
刺のあるような西原の声に、むつは軽く首を左右に動かした。だが、西原の姿を見付けられなかったのか、身体ごと声のした方を向いた。
「あっ、ほんとぉ。よっ、さっきぶり」
へらっと笑ったむつに対して、むっとひたのか西原がデコピンをした。むつは痛そうに額を押さえていた。
「じゃれてないで…とりあえず帰るよ。祐斗君、悪いけど手伝ってくれる?」
「あ、はいっ」
颯介の反対側に回った祐斗は、颯介と同じように山上の脇に腕を通して支え、ゆっくりと歩き出した。
 




