1話
「美味しかったですか?」
「あ、はい。とっても美味しかったですよ」
宮前に微笑みかけられると、むつは居心地悪そうに身じろぎしていた。
「そう、良かった。篠田君にお店選びをお任せして本当に良かったよ。よくこんな所、すぐに予約取れましたよね」
「いえいえ、そんな…あのここ実はむつさんのお知り合いの方が経営なさってまして、それで急にも関わらず…」
「へぇ…なら、是非わたしからもその方にご挨拶したいですね」
宮前がそう言うと、冬四郎とむつはちらっとお互いを見やった。むつは冬四郎に微かに首を傾げて見せた。
篠田が振り向いてすぐ側に控えていた京井を呼び、何かを囁いている。そして、宮前と京井、篠田がにこやかに話をしている。
それを眺めていると、右側からつんっと袖を引っ張られた。
「なぁ飯だけに呼ばれたのか?俺らは?特に俺とむつは無関係っぽいのに?」
むつは西原の言葉を聞き、頷いた。むつもそれをずっと気にしていた。わざわざ、何の為に呼ばれたのか、と。
宮前と顔見知りの冬四郎と篠田が呼ばれて、食事をするのはよく分かる。だが、初対面のむつと西原を呼ぶ、理由はあったのだろうか。




