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4話
むつはどの頭から声がするのか分かったのか、歩いていく。
「こんばんは。さっき…舞台に居た子かな?鑑賞教室で二人禿観たんだよ」
簪を沢山頭につけた頭の前まで行くと、むつはいたって普通に知り合いにでも話し掛けるように、話し掛けた。
「知ってる。意外と真剣に観てくれてた」
「気付いてたの?結構、後ろの席に居たんだけど」
「舞台からは、いつも客席を観てるから。顔がはっきりしなくても、真剣かどうかは感じる」
「そっか…それでさぁ、ここは?何がどうなってるのか、教えて欲しいんだけど。疲れちゃったし」
「けいやく、する?」
またその言葉か、とむつは思った。
「誰と何の?」
「わたし達と。ただで何かを与えて貰えると思うのは…図々しいでしょ?」
「等価交換ってやつか」




