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4話
これだけ静かなんだから、わずかな物音でも聞こえるのではないかと思ったが、何も聞こえてこない。
全ては気のせいなのではないかとさえ、思ってしまう。だが、むつは自分の目で見ている。人形が動いたのを。実はびっくり企画です、なんて言うにしては不気味すぎる。
むつは青白い炎の光を頼りに、山上と女性を探してあっちこっちのドアを開けていく。更衣室、休憩室、給湯室に控え室。なかなか、当たりにたどり着かない。
何も無さすぎて、だんだんとむつはイライラしてきていた。待つのが苦手なタイプなのだ。そして、それと同時に気も緩みつつあった。
じょじょに静かに行動するのもバカらしくなってきたのか、わざとばんっと大きな音をたてて乱暴にドアを開けたりしていった。
ちっと舌打ちをして、むつは足でドアを閉めた。こんな所を冬四郎や晃に見られたら、どんな小言が振ってくるのかとむつは想像して、ふんっと鼻で笑った。




