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4話
むつの立てる小さな足音以外は、何も聞こえてこない静寂だった。玄関ホールで自動ドアを叩いた時にも、車や人のがわめきは聞こえなかった。完全にシャットアウトされてるようなものだ。
むつは受付の台を軽々と飛び越えると、奥にあるドアをそうっと開けた。きぃっと微かにドアが音を立てると、むつはぴたっと止まった。
まるで、泥棒にでもなったかのような気がすると思うと、何だか可笑しかった。そして、こんな風に笑える余裕があるのは良い事だな、と思い音を気にせずにするっとドアをくぐって中に入った。
中には休憩室とロッカールームを兼ねたようになっていて、そこからまた外に続くようにドアがあった。むつはドアを開けた。真っ暗な廊下に出たむつは、ドアを閉めると立ち止まり耳を澄ませてみた。




