4話
むつは通話履歴から颯介の名前を見付けると、電話をかけた。コール音が聞こえてくると、微かに希望のような物が込み上げてきた。だが、コール音がするだけで颯介が出る気配はない。
電話を切ったむつは、しばらく画面を眺めていた。まだ、直帰する連絡をしていないから、颯介は携帯を気にしてくれているはずだ。
自動ドアに寄りかかり、むつはついでのように館内に居るはずの山上の携帯にも電話をかけてみた。出ないとは思っていたが、まさかの電源すら入っていないようだった。
「ちっ、まじくそったれ」
文句を言っていると、携帯が震えた。画面には颯介の名前が表示されている。むつはすぐに携帯を耳に押し付けた。
「もっしー?良かった…ちょっと不味い状況になっちゃっててさ」
『不味いって何があったの?』
「劇場内に閉じ込められた」
『閉館時間過ぎちゃったの?警備員さんとか見回り確認の職員は?』
「違うと思う…依頼と関係あるか分かんないけど怪異に遭遇。ってか、社長を見付けたから後を追ったのに見失って、気付いたらこんな状況」
『どんな状況かいまいち分からないけど…そっちに行った方が良さそうだね。家からだし少し時間かかるけど、大丈夫?』
「大丈夫…とりあえず、社長も閉じ込められてるはずだから探してみようかと」




