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4話
そんな事を考え、悩んでいるようにも思えたむつだったが、腹の内はすでに決まっているようなものだった。
山上と女性をこの劇場内から連れ出す。そう自分に言い聞かせるように決めると、むつは鞄から出した携帯を尻のポケットに突っ込み、指先に青白い炎を灯した。
携帯のライト機能を使う手もあるが、それをすると片手が塞がるし何かと不便になるような気がした。だが、緊急の時にすぐ使えるようにポケットに入れておく。そして、斜めにかけていた鞄の紐を調節し短くし動き回っても邪魔にならないようにした。
廊下や壁、天井が自分の目で見えるようになると、こそこそするのは辞めてむつは、先を急ぐように歩き出した。
辺りを気にしながら歩き、受付の前まで行ったが、誰も居なかった。人の気配は全くといって言い程ない。正面の出入り口となっている自動ドアの前に立ってみるも、やはり何の反応もない。




