4話
「それもあるかもしれないわね。けど、昔は1人で1体を操っていたのよ。今では主遣いと言われる人が、頭…あたまの事ね。と、右手を左遣いが左手をそして足遣いが居るのよ。それぞれ、主遣いの合図で動かしていくの」
「人形は顔とか着物とかみんな違うじゃないですか?役ごとに沢山並べられてるんですか?」
「ううん。頭を取って保管してあるのよ。役によって頭を変えて着物を着せて…だから、骨組みしかないの。それに、女の人形には足がないの。だから、着物の裾をさばいて足があるように見せてるの…あっ、もう1時間経っちゃった…ごめんね。戻らないと…」
「あ、いえいえ。お忙しいのに有り難う御座いました。鑑賞教室始まるまでは説明読みながら見て回りますんで、大丈夫です」
むつが頭を下げると、女性は手を振ってぱたぱたと資料展示室から出ていった。
1人になったむつは、ケースに入っている人形を見ていた。大きさは、むつより少し小さい、150センチくらいだろうか。顔の大きさと言い、人と変わらないサイズのようだった。
女性人形には、足がないとは言っていたのが気になり、むつはしゃがんで足元が見えないかと覗いてみたが、着物の長い裾で、全く見えなかった。




