4話
「そう、ですね…能楽、狂言?の野村も格好いいなって思うんで興味はありますよ。あとは浄瑠璃ですね。近松門左衛門の曽根崎心中とか…あの、お坊さんがお寺の鐘に隠れたけど龍になった女性に焼かれちゃう話は…また違いましたっけ?」
「うふふ、若いのに趣味は渋いわね。お坊さんのお話は…道成寺の事ね。それは、能も文楽もあるわよ。悲恋っぽいのが好みのようね」
「かもしれませんね…けど、全然分からない事ばっかりで。こういう所に来たのも昨日が初めてだったんです…何か入りにくいっていうか」
「あら、昨日も来て今日も?何だか嬉しいわ」
むつの言葉に機嫌を良くしたのか、女性はにこにこしながら、資料展示室に入ると分かりやすく説明を始めた。
「先ず、お嬢ちゃんの興味のある能楽だけどこれはね、奈良時代頃に入ってきたもので、雅楽って分かる?」
「えっと、神楽とかですか?音楽に舞を合わせたもの…?」
「あら、物知りね。雅楽と一緒でお偉方の楽しみだったのが民間に広がって、笑いの芸や寸劇に変わっていったのが猿楽って言われる物で、それが今の能になっていってるの」
「翁とかですか?お祝い事とかお正月にする、明るい感じの…」
「そうそう。興味があるってだけあってやっぱり知ってるわね。それで浄瑠璃だけど…ちょうど人形があるわ」
女性に案内されケースに入った、人形の前にむつは立った。意外と大きく重たそうに見えた。
「おっきいんですね…だから、3人で1体の人形を動かすんですか?」




