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4話
5分も走ったか走らないかのうちに、警察署の前に着いてしまった。西原がヘルメットを脱いで降りると、むつはずるずると前の席に移動した。
「あっという間すぎる」
「もっと一緒に居たかったか?」
「そうね」
むつが寂しそうに言うと、西原は瞬きを繰り返して意外そうにむつを見ていた。
「今回、1人であっちこっち行くからつまんないんだもん」
「あ、そういう事か…まぁ仕方ないよ。手に負えなくなったろ、湯野さんと祐斗君に言うんだろ?手に負えなくならない方が良い」
「そうね、付き合ってくれてありがと。適当に頑張ってくるよ…ご飯、ご馳走さま」
「おう、気を付けて行けよ」
西原に手を振って、むつはバイクを走らせた。バックミラーに映る西原の姿が、すぐに小さくなり見えなくなった。
「あーぁ。本当に嫌な仕事」
返事をしてくれる人など居ないのに、むつは呟くと少しだけスピードを上げた。




