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1話
京井に案内されて来た2人の男。がたいの良い穏やかな男は宮前 冬四郎警部補と坊主に近い短髪に眼鏡の西原 駿樹巡査部長は、篠田に向かってきっちりと腰を折って挨拶をした。
「忙しいのに呼び出して悪かったね。さ、座って。」
「失礼します」
冬四郎と西原も京井に上着を預かって貰い、むつの左右に座った。
「むつ、ずいぶんめかし込んでるな。後ろから見たら誰か分からなかったよ」
西原がにこにこと笑いながら、むつを上から下まで遠慮なしに眺めている。冬四郎も珍しい物を見るように、むつを見ていた。
「そうですね。いつもみたいに、びしっとした感じで来るかと思っていたので、わたしもびっくりでしたよ」
からかわれていると分かり、むつはしかめっ面をした。それを見て、冬四郎が咎めるように肘で小突いてきた。
再びやってきた京井が、冬四郎と西原のグラスにもワインを注いだ。
「京井さん?」
「その節は大変、ご迷惑をおかけしました。本日はわたくしが全ての給仕をさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
「あ、いえ…こちらこそ」
深々と京井が頭を下げると、冬四郎も戸惑ったように頭を下げた。