3話
最後まで言い、むつが離れると冬四郎は険しい顔をしてむつの方を向いた。
「あのな、自分が嫌だと思ったんならすぐに通報しないといけないぞ。いくら、それが俺だったとしても、立派な犯罪だからな」
はーっと冬四郎は、深い溜め息をついた。
「本当に俺だったか試してみるか?」
真顔で冬四郎に言われ、むつは言葉よりも先に右手を振り上げ冬四郎の頬をひっぱたいていた。
「殴るわよ」
「叩いてから言う事か?…冗談、ちっとは気が楽になるかと思って言ってみた…って、むつ?」
うつ向いていたむつの肩が微かに、震えているような気がして冬四郎はむつの顔を覗き込もうとしたが、急にむつが顔を上げたせいで、顎に頭突きをくらう形になった。
「いっ、てぇ…今のは痛いぞ」
「しろーちゃん、靴変えた?この前、2回目に呼ばれた時と靴が違う」
「あ?」
痛そうに顎を擦っていた冬四郎は、自分の足元に視線を向けた。
「変えた。この前のな、新しいのだったんだけど靴擦れすんだよ。ちょっとサイズ合わなくて。だから、後輩にやった」
「いつ?」
「呼ばれた次の日だな」
「…ノートパソコンの色は?」
「は?何でそんな事…今のは青だ」




