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3話
「次は…っと…?」
携帯灰皿を鞄にしまい、ペットボトルの緑茶を飲みながら地図と住所を見ていると、何かにつられたように、むつは顔を上げた。
何があったわけでもなく、ただ何となくだったのだろう。だが、むつの居るベンチの少し先に見慣れた顔を見つけた。
「……」
むつは地図とペットボトルを持って、立ち上がるときょろきょろしながら、ゆっくり歩き出した。地図と周辺を見比べつつ、見慣れた顔、山上を見失わないようにしていた。
山上はむつに気付いていないようで、隣を歩く女性と楽しげに会話をしているように見えた。そう、見えたのは女性がにこやかだったからだ。
山上と女性との距離を十分に開けて、むつは後をついていった。沼井の出先を調べていたつもりが、山上を見付けた。と、なれば山上を追うしかないとむつは思ったのだ。




