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3話
むつは手に持っていたペットボトルを冬四郎に向かって投げた。しまった、と思った時には遅く、冬四郎の肩に当たったペットボトルはごとんっと床に落ちた。
「お前…それは無しだろ」
床に膝をついて、冬四郎はペットボトルを拾い上げ、むつの手を取ると持たせた。
「ごめ…っ‼」
しゃがんで謝ろうとすると、いぐっと冬四郎に腕を引っ張られ顔を掴まれたと思ったら、唇に温かく少しかさついたものが押し当てられていた。
びっくりして口が少し開くと、ぬるっとした熱いものが差し込まれ、むつの舌を絡めとるように動かされた。
ぞわぞわっと寒気のような物がしたむつは、すぐに動けなかった。だが、ぎゅっと拳を握り身体に力を入れると冬四郎の腹を力いっぱい蹴りあげた。
「うっ…」
冬四郎が低く呻き、掴んでいた手の力が緩むとむつはすぐに腕を引き冬四郎との距離を開けた。




