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3話
マンションに戻ったむつは、ドアを開けて立ち止まっていた。玄関には明かりがついているし、見慣れた革靴がきちんと揃えて置かれている。
何となく、イライラしながらむつは靴を脱いでスリッパに履き替えると、リビングのドアを開けた。
「何、してんの?」
「開口1番、ずいぶんなご挨拶だな」
「当たり前でしょ?いくら合鍵持ってるからって、連絡もなしに女の子の部屋に上がるなんてどうかしてる」
リビングでパソコンを開いて、仕事をひていた冬四郎は、機嫌の悪そうなむつの声を聞き、顔をあげた。
「何、荒れてるんだ?」
「関係ないでしょ、うっさいなぁ」
冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを出すと、むつは自室に入ろうとしたが、冬四郎に腕を掴まれた。
「待ちなさい。何があったんだ?」
「何もない。放してくれる?もう寝る」




