3話
「仕事の事を言わないなんて、珍しいなとは思ってたんだけど…また面倒事?」
「そう、ね…口止めもされてる」
ライターをかちかちといじり、結局は火をつけずに、灰皿にタバコを置いた。
「誰に?」
「代理人に…まぁいっか。ちょっと今は話せない部分もあるけど…あたしの、兄はねしろーちゃんの上にまだ3人も居るの」
急に関係ないような話が出て、颯介も祐斗も驚いたような顔をしている。
「ま、聞いて。でね、1番上が警察署の署長なわけ…あたしもこの前知ったの。その1番上が、代理人。祐斗が駅で見た男の人がそれね…で、1番上と4番目と末っ子が兄弟である事は、知られたくはないわけよ。それぞれ、やりにくい事も増えるから」
「それを俺らに言って良いんすか?」
コーヒーの入ったマグカップを両手で包むようにして、持っていた祐斗が眉をひそめていた。
「本当は良くないかな。だから、黙っててね」
むつは、熱いコーヒーを冷ましながら一口飲むとテーブルに戻した。
「お兄さんが代理人…って本当の依頼人は入院してるって言ってたね?」
「うん。依頼人は沼井だよ」
はっきりと言うと、颯介と祐斗が驚いたような顔をして、むつをじっと見ていた。




