3話
西原が帰ると、むつは湯飲みや皿を片付けてデスクに戻った。ようやく鞄を下ろして、はーっと溜め息と共に椅子に座った。
「何か疲れてるみたいだね」
「そうでもないよ。悩めるお年頃なの」
むつがふふんっと笑うも、颯介の表情は和らぐ事はなかった。どうしたのかと、むつは颯介の方を見ると、祐斗が気まずそうな顔をしていた。
「仕事の話。してくれるよね?西原さんが、来てたのも、それでかな?」
「あっ…」
颯介には警察絡みの仕事とは、言っていなかったのに、さっき祐斗と会った時につい言ってしまったのを思い出した。
「…正確には違うかな?」
「まぁ、とりあえず話してね」
有無を言わせない雰囲気に、むつは不本意ながらも嫌だとは言えなかった。
机を挟んで、颯介と祐斗を前にしてむつは全部を話すべきなのか、それとも晃に言われた通りに嘘をつくかで迷った。
「話せない事もあるけど、良い?」
迷ったすえに、むつは立ち上がった。そして、外のドアノブに出張中の看板をかけた。また、キッチンに入ると人数分のコーヒーを入れて、灰皿を片手に出てきた。
「ゆっくり話しよ」
むつが奥のソファーを指すと、颯介と祐斗は移動した。むつはソファーの後ろの窓を開けると、ようやく座ってタバコをくわえた。




