3話
2人は、じゃれあいながは走ったり止まったりしながら、進んでいた。祐斗がむつをからかうように、後ろ向きに歩き、携帯を見せてきた。
「もーっ‼って、あ…祐斗っ」
祐斗のすぐ後ろに人が居るのに気付き、むつが手を伸ばしたが遅かった。祐斗は人と背中からぶつかった。
「わっと、ごめんなさい」
「よぉ、2人とも楽しそうにしてるな」
祐斗がぶつかってもよろける事がなかったのは、ぶつかった人が背中を支えるように腕を伸ばしてくれていたからだった。
「西原さんっ‼」
「あら、先輩…」
「2人揃って何してんだ?」
「見てくださいよーっ‼むつさんのこの女子っぽい姿を」
祐斗が携帯を差し出すと、西原はそれを見て、ぷっと笑った。実際に見ているくせに、笑うとは、とむつは思った。
「へぇ…可愛いな。何で、こんな格好してんだ?彼氏でも出来たのか?」
「篠田さんとデートだったらしいです」
「ほぉ、篠田さんと?篠田さんには彼女居るんじゃなかった?こさめちゃんって子が」
何も知らない西原の中では、猫又であるこさめは篠田の彼女という事になっているらしい。むつと祐斗は顔を見合わせて、頷いた。そういう事にしておこう、と。




