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3話
「そうですか。まぁこれから調べてみますが…先ずはこちらを」
むつはメモ書きをしていた手帳に挟んでいた紙を男に手渡した。そこには、銀行名と口座の番号が書かれていた。
「入金を確認した後、調査にかかりますので。全額ご入金くださいね」
「分かった。今日中にしておく」
「分かりました。ご報告は結果が出次第まとめてで、よろしいですか?」
「それで、いい」
「では、今日の所はこれで失礼します。また何かありましたら、お伺いするかもしれませんので、その時はまたよろしくお願いします」
会釈をして出ていこうとしたむつだったが、ぴたっと止まると振り向いて戻ってきた。
「その手紙、お預かりしてもよろしいですか?」
「何枚でも持っていけ」
「では、お言葉に甘えて全て預からせて頂きます…見たところまだ下半身だけのようですね。動かないのは」
ふふっとむつが意味ありげに笑い、箱ごと手紙を受け取った。
「待て、他のやつらの状態は?」
「他のやつら?…さぁ?どうなんでしょうね」
ぺこっと頭を下げると、今度こそ振り返りもせずにむつは部屋から出ていった。




