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3話
むつの他の方、という言葉と高額な請求が効いたのか沼井は素直に質問に答えていく。
「この手紙が届く前…何かした事は?変わった場所に行ったとかありませんか?どんな事でも構いませんので」
「それなら…おい手帳を」
沼井に指示されて男が、分厚い手帳を持ってきて沼井に渡した。
「どのくらい前だ?」
「ここ1ヶ月ほど」
「そうだな…」
沼井が読み上げていく予定をむつは、鞄から出した手帳にメモを取っていく。晃はその手慣れたむつを、感心したように眺めていた。
「分かりました…と、あとはそうですね。山上と奥さまの関係に気付かれたのはいつ頃ですか?」
「それも2週間ほど前だ。入院してから、家の者が来た時に聞いたんだ」
「山上と沼井さんのご関係は?」
「警察学校の同期だ。元々は山上と妻が付き合ってたんだが、俺の方が出世が早くてな。それで、妻が鞍替えしたんだ」
自慢気のように沼井が言い切るのを、むつは大して興味もなさそうに、ふーんと聞いているだけだった。




