3話
むつはゆっくり沼井に近付くと、しゃがみこんだ。そして、指を4本立てて見せた。
「よん、じゅうか?」
にっこりと笑ったむつは、首を横に振った。すると、沼井が歯を食いしばってむつを睨んだ。
「嫌なら…このまま死ねばいい」
耳元で沼井にだけ聞こえるように囁くと、立ち上がった。今度こそ、本当に帰ろうとむつは歩き出した。
「待て‼出す、出すから」
「そうですか?でしたら…もう少しお話もしてくださると何かとやりやすいんですが。いかがですか?」
「わ、分かった」
「その前に、ベッドにお戻りください。床では冷えてしまいますよ」
その言葉を聞き、男が沼井の肩に腕を通して抱き起こしてベッドに座らせた。そして、枯れ木のような足を持ち上げてベッドに乗せると布団を膝の辺りまでかけた。
沼井がベッドに戻るまでの間、むつは晃の方を向いて、鼻の頭にシワを寄せ歯を見せるようにわざとらしく笑った。それを見て、晃が呆れたような顔をしていた。
「では、まずいつ頃最初の手紙が来たんですか?」
「最初は2週間ほど前だ」
「宛名や消印もないので直接ポストに?」
「いや、枕元にだ。起きたら、これがあった」




