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3話
病室は広々とした二間続きになっていた。ちょっとしたビジネスホテルなんかよりも、ずっと居心地の良さそうな感じだ。
入ってすぐの部屋はリビングなのだろうか、丸いテーブルにソファーがあり小さいがキッチンまであった。
ドアを開けてくれた男に案内され、むつと晃は奥の部屋に入った。大きなベッドのリクライニングを上げて、それに寄り掛かるように男が上体をあげている。
「失礼します。沼井さん、お加減はいかがですか?」
沼井と呼ばれた男は、うっすらと笑って見せた。むつが思っていたような、脂ぎった中年のおっさん、というよりむしろ、鶴のようにほっそりとした男だった。
「あぁ、変わりない。それか?」
「えぇ、こちらが以前にお話しました、怪異に関しての専門家である玉奥さんです」
「子供じゃないか」
それ呼ばわりのあげく、子供と言われむつの左目が痙攣するようにぴくぴくと動いた。




