哀蚊
あぁ哀蚊よ
どこへ往く
木枯らしに揺れる
落伍者は
この世の終わりに
何を見る
あぁ哀蚊よ
どこへ往く
何もなさずに
流されて
あれよあれよと
このざまか
あぁ哀蚊よ
どこへ往く
袂を別つ
同胞は
金木犀を香らせた
あぁ哀蚊よ
どこへ往く
自由と孤独をないまぜに
何を心に生きるのか
あぁ哀蚊よ
哀蚊よ
すでに食する意気もない
今なお飛ぶのはなぜなのか
地に落ちぬのはなぜなのか
あぁ哀蚊よ
哀蚊よ
ただ飛んでいる哀蚊よ
か弱き孤高な動線は
迷いなく迷いぬいた跡
あぁ哀蚊よ
哀蚊よ
気高き孤独な哀蚊よ
悲しき優雅な哀蚊よ