第4章 36話 『エリアEへ』
「遅くなっちゃったな。雪村の奴は大丈夫かな」
そう言いながら、早苗は急いで雪村の元へ向かった。
雪村が闘っていた所に戻ると、3つの死体が倒れていた。
そのうちの二つは、身体から巨大な刃が飛び出ている不思議な死体だった。
最後の一つは、胴体を斬り裂かれていた。
「あ、早苗ちゃんだ…」
「雪村、あんたは無…って、ちょっと!、その傷!、大丈夫なの!?」
雪村進一の背中から、大量の血が流れていた。
致命傷では、なさそうだがかなりの量が流れていた。
「どうしたの?」
「ちょっと、敵の攻撃を捌き損ねただけだよ」
影を操る能力者の懐に飛び込んだ時、敵の最後の抵抗として、敵の足元の影を一本飛び出させ、それで彼の背中を突き刺したのだ。
「暫く、休憩かな…」
「そ、そうね」
そのまま雪村進一の意識は遠のいていった。
一方その頃、Aブロックでは…
Aブロックの真ん中にある、工場にて二人の男女が死闘を繰り広げていた。
「うららぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
そう叫びながら、赤城隼人はひたすら水無うららに向かって自身の刀を振りかざしていた。
『兄さーん、そんなんじゃ当たらないよっと』
そう言いながら、自分に振りかかってくる全ての刀を紙一重で防いでいた。
既にその時点で実力の差は見えていた。
赤城隼人は、最初から本気で彼女に斬りかかっているが、彼女は実力の半分も出さずにそれらを防いでいた。
『いい加減飽きちゃったし、そろそろ終わらせよっかな。<斬撃よ、彼の者を斬り裂け>』
うららの刀から、6本の斬撃が放たれた。
赤城隼人は、それら全てを刀で斬り裂いたが、彼以外の人は別の話だった。
自分の武器では防ぐことの出来ない斬撃に為す術なく、斬り裂かれてしまった。
赤城隼人は、Aブロックに30人の仲間を連れてやって来たが、今では、10人までに減ってしまった。
「うらら、どうして僕がこんなに君を恨んでいるか分かるかい?」
『貴方の両親を殺したかーら?』
「その通りだよ!<我が鬼よ、刀に纏えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…!>」
先程よりも、倍近い鬼の力を使い、刀の切れ味を高めた。
そのまま、うららの所へ刀を振るった。
彼女は、それを防いだが赤城隼人の勢いに押され、壁際まで押し付けられてしまった。
「あと…少し…」
『こ、これは、ヤバーイ。何ちゃって』
すると、赤城隼人の身に不可視の斬撃が6つ襲いかかってきた。
彼は、防ぐ間もなく、それら全てを喰らってしまった。
『私の能力のこと、忘れてたんですか?、兄さーん』
Bブロックでは…
Bブロックの真ん中の工場で、西原司率いる数名の隊員が工場を占拠していた。
このままエリアEへ乗り込もうと思っていた時、彼らは現れた。
『<毒よ、壁を貫け>』
上野瀬菜は、毒で作ったナイフを巨大化させ、工場の天井に穴を開けた。
更に彼女は邪魔者の排除を始めた。
『<毒よ、弾となり彼の者達を撃ち抜け>』
彼女の周りから無数の弾が形成され、それらは雨のように降り注がれた。
「総員!、退避せよ!」
だが、その指示が隊員全てに伝わるより先に毒の弾で身体を貫かれ、何人もの隊員が殺されてしまった。
毒の雨は、僅か5秒間だけ降り注ぎ、その間に25人の隊員の命を奪った。
『安心して、楽に死ねるように調合しといたから』
上野瀬菜と彼女の仲間の一人は、毒で作った羽で降り立った。
そのまま瀬菜は、エリアEへ向かおうと思い、階段へと向かおうとした、
「そうはさせんぞ!<鬼よ、我に力を!>」
西原司は、瀬菜の近くまで跳び、その勢いで彼女の白い狐のお面に殴りかかった。
「そのお面、叩き割らせてもらうぞ!」
だが、彼が殴ったのはお面ではなく壁だった。
しかも猛毒で造られた壁だ。
『その毒は、触れただけで骨まで溶かす猛毒だから、触らない方がいいよ』
「くそが!」
事実、その壁を殴った瞬間、彼の拳の皮膚は溶け始めていた。
その事に気付き、直ぐ様拳を引っ込めたが、既に遅かった。
右の拳はもう使い物にならない状態になっていた。
『それじゃあ、そろそろ行くわ、コイツらの相手宜しくね。まだ何人か生き残ってるから全員殺しといてね』
『了解!』
仲間の一人にそう指示し、彼女はそのままエリアEへと向かった。
そして、龍平達のいるDブロック…
龍平達はDブロックの真ん中の工場に向かっていた。
だが、その工場にはおびただしい量の死があった。




