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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 33話 『任せた』

港の上空にその穴は開いた。

上空千メートルの高さから、その黒い集団は降り始めた。

その数は、約500。

更に、全員が武装しておりかなり厳しい状況になろうとしていた。


「そうはさせないよ。<龍よ、彼の者達を喰らい尽くせ>」


だが、500人全てが港の地に足をつけることはなかった。

吉野裕介が放った五頭の龍は、自身の空腹を満たすかのように、黒い集団を喰らい尽くした。

それでも、数は400程しか減らなかった。


「さてと、これ以上はやられるわけにはいかないからな…」



上空の黒い集団が、降り立った頃…

龍平達は先程の混乱から何とか立て直した所だった。


「それで、龍平君はこの後どうする予定かな?」


雪村はそう聞いてきた。

彼は、既に刀に手を置き、いつでも動けるようにしていた。


「とりあえず、俺はエリアEに向かう!」


エリアEとは、港の地下に存在するエリアだ。

元々は、災害時に避難するための場所として造られたらしいが、それが使われることはなかった。

今日までは…


「さっき、遠藤さんがいたステージの方を見たけど、彼の姿はなかったから、恐らくエリアEに行ったんだと思う」


エリアEに向かう道は、5つある。

1つはステージの真下のマンホール。

後の4つは、それぞれのブロックの真ん中にある工場の階段から行くことが可能だ。


「ねぇ龍平、ステージの真下のマンホールから行かないの?」


今度は、櫻子がそう聞いてきた。

彼女は首を傾げていた。

確かに、彼らの現在地からだと、そこが一番近いのだが、行くのはなかなか難しかった。


「櫻子ちゃん…理由はあれだよ…」


あゆなが指を指した方向に視線を向けると、彼らはそこにいた。


『どうやら、私たちのせいらしいね』


『そうだな』


黒い法衣を身に纏った三人の人影がマンホールの近くに立っていた。

一人は影を操る能力者だと分かるが、残りの二人は分からない。


「師団の奴か?」


『そうだよ、ここには五番、六番、七番の三人がいるよ』


最悪だった。

一人一人がかなりの実力を有しているのが黒鬼十師団であり、その実力は龍平が体験している。

そんな強者が三人もいるのだ、マンホールから行くのは不可能に近い。


「しょうがねぇ、Dブロックの工場から行くぞ」


『そうはさせないよ…』


龍平達は急いでこの場を離れようとしたが、それは出来なかった。

影を操る能力者の影が自分たちの影を捕らえており、動くことが出来なかった。


「や…やばい…」


『黒鬼様が君にどんな期待をしているかは知らないけど、やっぱり君はここで葬っておくべきだ。

<影よ、彼の者達を突き刺せ>』


龍平達を掴んでる影から細い針状のような物が伸び始めた。

あと、数秒で彼らの命を奪いに来るだろう。


『最後に言い残す言葉は?』


龍平は、彼らを睨み付け、叫んだ。


「死んでたまるかよ!、黒鬼をぶっ殺すまで俺は死ねねぇんだよ!」


『残念だね、君の刃が届かなくて…』


そのまま針は、彼らの身体を突き刺すべく、動きだした。

針が彼らの身体を突き刺す寸前だった。

龍平達の中で影の拘束を免れた、一人の少年がそれらを斬り裂いた。


「龍平君、これは貸しだよ」


それらを斬り裂いた後、彼は笑顔でそう言った。

このような状況でも彼の表情は変わることはなかった。


『雪村進一…本当に厄介ですね…』


「褒めてくれて、ありがとう」


『貴方も、ここで始末しておくべきですね』


「それは、絶対に無理だよ」


『ここには、師団が三人もいるんですよ。どちらかと言えば、貴方が生きて帰る方が無理だと思いますが』


敵の言うとおりだ。

だが、それでも雪村は笑った。

もし、仮に死神がいるのなら、きっとこんな笑いかたなのだろう。


「龍平君!、君たちは先にエリアEに行ってて!

僕は後で、追い付くから」


「ふざけんな!、俺も闘うぞ!」


それを、雪村は遮った。


「君の相手はこんな小物連中じゃないでしょ?。早く行かないと、救える命も救えないよ」


「雪村…」


やはり、仲間達にはバレていたらしい。

自分の弱さが。


「早くいきなよ…」


龍平は覚悟を決め、振り返り走りだした。


「任せたぞ!」


最後にそう言い残し、龍平は仲間と共にDブロックの工場へと向かった。


「さてと、何で早苗ちゃんは残ってるの?」


唯一、この場に残ったのは早苗だけだった。

彼女の性格なら、龍平の方へと行くと思っていた。


「私が用があるのは黒鬼じゃなくて、師団の方だから」


「なるほどね、お互いに頑張ろうね」


「あんたと共闘なんて嫌だけどね」


そう言った時の早苗の表情は穏やかだった。

そして、二人は敵の方へと視線を向けた。


『雪村進一…本当に私たちと闘うおつもりですか?』


「当たり前でしょ」


『分かりました…相手が貴方なら私たちも全力でいきましょう』


死神と十師団の闘いが今、始まった。

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