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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 31話 『討伐開始』

8月7日午前9時30分

ある建物の中に、その黒い集団はいた。

集団の真ん中には、漆黒の刀を携えている黒鬼が静かに立っていた。


『みんな、集まってくれてありがとう…』


黒鬼が、そう言うと、辺りからは歓声が生まれた。

大鎌を持った、二番が注意を促すと歓声はピタリと止んだ。


『さてと、今日が一体、どんな日かみんなは知ってるかい?』


黒鬼が、辺りにそう問いただした。

しかし、周りの人物はみな答えることが出来なかった。


『今日は、この国の未来が決定する日だ』


すると、辺りからはざわめき声が生まれた。

十師団以外には、この事は伝えられていなかったのだ。


『私達が、遠藤さんを殺せなかったら、最悪の場合は国が滅びる…だから、例え…間違っている事だと分かっていても私達は彼を殺さないといけない…』


黒鬼の言葉には、重い覚悟が込められていた。


人を殺してでも、護りたい物がある。


その事が、人として間違っていることも黒鬼は理解していた。


『さぁ、行くよ…この国の未来の為に…』


そのまま、黒鬼達はその場を後にした。




8月7日午前11時45分

上野瀬菜は、あるものを作っていた。

それが、出来上がると、それを注射器に注ぎ込んだ。


「これを、使うのは万が一の時…」


瀬菜は、家に置いてある写真の方を見つめると、悲しげな瞳を浮かべた。


「この写真をもう一度見るために…」


そのまま彼女は、ある場所へと向かった。

その写真には、瀬菜と満面の笑みを浮かべている一人の少年が映っていた。




8月7日午後1時23分

龍平達は、黒鬼が来ると言われている港へとやって来た。

その港はかなり広く、大きめの大学が四つぐらいは入る程の広さだった。

港の近くには、色々な工場があった。

鉄鋼業や運送業など、種類は色々あった。

その港は、主に四つに別れていた。

Aブロック、Bブロック、Cブロック、Dブロック。

この四つに別れていた。

ブロックごとに、それぞれの企業が入っており、それぞれは互いに共存しあっているらしい。

この四つのブロックの真ん中には、ステージが建てられており、今日の午後6時から遠藤五郎主催のパーティーが開かれるとの事だった。

ステージの近くには、人気のアイドルグループやバンドが集まっており、リハーサルを行っていた。


「僕、サインでも貰ってこようかな」


雪村は何時もと変わらず、軽口を叩いていた。

その事に、龍平はため息をついた。


「もう少し、緊張しろよ…」


「だって、黒鬼達が来るとしてもパーティーが始まる、午後6時からでしょ?。

今から気を張ってたら、持たないよ」


一理あると思い、龍平は少し気を緩めた。

港に着いてから約三時間経過していた。

この三時間の間で、黒鬼どころか怪しい奴すらおらず、龍平は少し退屈していた。


「暇だな…」


すると、横からコンビニの袋を持っている少女にあるものを差し出された。


「そう言うと思って、トランプ買ってきたよ」


龍平の横には、少し汗をかいている櫻子が立っていた。

櫻子の後ろには、あゆなと早苗が立っていた。


「買い出しお疲れ様」


「本当に疲れたよ、肩凝っちゃったからマッサージしてよ龍平!」


肩が凝っているのは別の要因のせいたど思ったが、彼は言わないことにした。

とりあえず、櫻子からコンビニ弁当を受けとって、少し遅めの昼食をとることにした。


「それにしてもさ、何で黒鬼は遠藤さんのことを狙ってるのかな?」


昼食を食べ終えてから、櫻子はこんなことを口にしていた。

確かに、言われてみれば疑問だった。

それと…


「何で、上野瀬菜はその事を知っていたのか…」


この二つのことが、龍平にとって疑問なことだった。

恐らく、上野瀬菜が何かを知っているだろうと龍平は睨んでいた。


「今回の討伐、俺たちの優先させたいことを発表してもいいか?」


龍平がそう言うと、彼らは黙って龍平の方へと視線を向けた。


「まず、黒鬼若しくは十師団をぶっ潰すことと、上野瀬菜の確保…この二つを俺たちは優先事項とする…いいか?」


龍平は本来なら、遠藤五郎の安全を最優先させたいが、ここで黒鬼若しくは十師団を逃がせば、更に被害が大きくなることは火を見るより明らかだ。

なので彼は、自分のモヤモヤを払拭し、この決断に至った。


出来ることなら、人命を優先させたいが…


彼の中では、それよりも大事なことがあった。

黒鬼への復讐…

それが、彼の中では一番大切なことだった。


絶対に、ぶっ殺してやる…


龍平の瞳には、殺意と怒りが滲み出ていた。




8月7日午後5時50分

龍平達は、この時間に至るまで、辺りの見廻りをしていた。

なるべく、パーティーの関係者に見つからない様に、動いていた。

この時間になると、赤城隼人から配置場所での待機命令が下され、現在彼らはステージ近くの工場の横に立っていた。


「あのさ、結局私たち、この時間まで何させられてたの?」


早苗は龍平の方を向いて、そう答えた。

その意見に櫻子も同意していた。


「そうだよ、龍平!、私たちに結局何させてたの!?」


龍平は大きなため息をついた。

まさか、ここまで二人の頭が悪いとは、彼も思ってはいなかった。

普段は軽口を叩く、雪村でさえ、龍平の考えに気付き、真面目に仕事していたというのに。

仕方ないので、龍平が答えようとした時、龍平の代わりにあゆなが答えを言ってくれた。


「龍平はさ、黒鬼達がどこからやって来るのかを調べていたんだよ」


「どうゆうこと?」


櫻子と早苗は?マークを浮かべていた。


「つまり、前もって黒鬼達がやって来そうなところを調べておいて、やって来た時にどうゆう対処をするのかを考えてたんだよ」


なるほど!と二人は納得していたが、それだと50点だ。

すると、今度は雪村が話し出した。


「それと、もうひとつ。この辺りの地形を確認しておきたかったんだよね?。戦闘が始まった時の為に闘いやすそうな場所や隠れ場所を選定しておいたってところかな?」


「そうだよ…」


以上が、彼が見廻りを指示した理由だ。

だが、彼はある一つの疑問があった。

見廻りをしている最中、敵が隠れている気配や何かを仕掛けている様子がなかったことだ。

龍平は、てっきり、爆弾でも仕掛けて派手に気を引いてから殺すと考えていた。

それか、暗殺が得意そうな仲間を使い、殺させるか。

彼が考えていたのはこの二つだった。

この二つはどちらも外れていた。


「そもそもの話し…黒鬼達はどうやってここに来るつもり何だ…」


昨日、赤城隼人から、黒鬼が複数の能力を持っていることや、その中の1つが別の空間を形成し、その空間に入る能力だということも聞いていた。


「もしかして、別の空間から、ここまで来るつもりか?」


それなら、移動しても誰かにばれることはない。

だが、そもそも空間で移動した分は、そのまま元いた空間に戻ったとして、移動した場所と同じ場所に出るのだろうか。


「それは、ないな」


もし、そうなら。自分にとって邪魔になるやつは全員始末しようと思えば出来るからだ。

だが、黒鬼はそれをしなかった。

単なる気まぐれ、それか空間の移動が完璧じゃないかのどちらかだ。

恐らくは後者だ。

黒鬼の空間の能力は、こんなものだろうと龍平の中では既に予想は出来ていた。


「さて、そろそろ空の方を見ておかないとね」


雪村は突然、そんなことを言った。

疑問に思った、早苗は理由を聞いた。


「何でそんなことをするの?、星でも見たいの?」


すると、雪村は少し笑いながら返事をした。


「違うよ。早苗ちゃんも赤城さんから黒鬼の能力のことは聞いたでしょ?、もし仮に黒鬼が空間移動が出来たとしたら、その能力を使って奇襲すると僕は思うんだよね」


「それで、何で空を見るの?」


「空から襲われたら、どうすることも出来ないでしょ?、あのステージ、屋根がないから」


「なるほど!」


それで、早苗は納得してしまった。

折角、理解したところを申し訳なくおもいながら龍平は口を開いた。


「雪村、早苗、空は見なくていい…」


「どうゆうことだい?」


雪村がそう聞いてきた。


「黒鬼の空間の能力はそんなに、万能じゃない…」


続きを彼は言い始めた。


「いいか…黒鬼の空間の能力は…いや、待てよ、もし俺の予想通りなら…」


もし、自分の予想が当たっていたなら…

それは彼らにとってかなりヤバイ状態かもしれない。

龍平は雪村達への説明を後回しにして、櫻子とあゆなに指示を出した。


「あゆな!、お前の能力で氷柱を数本用意してくれ!。櫻子!、お前の能力で風の矢を作ってくれ!」


「了解!」


二人は、直ぐ様、龍平の言われた通りにした。

雪村と早苗は訳が分からないまま、その場に立ち尽くしていた。

そして、時間は遂に午後6時になった。

すなわち、討伐開始の合図だ。


絶対に殺してやる…


龍平の憎悪が高まり始めた。

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