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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 24話 『温泉』

時が過ぎるのはあっという間だった。

夏祭りの日から約三週間たった。

7月21日

今日は、龍平達の学校の終業式だった。

この日に至るまで色々な事があった。

何より、一番めんどくさかったのが期末試験だった。

校長の長話と担任のどうでもいい夏休みの注意を聞き終わり、彼らは下校しようとしていた。


「あ~あ、やっと終わったね!龍平!」


「そうだな」


学校が終わったことを一番嬉しく思っているのは櫻子なのかもしれない。

坂を下り、校門から出ようとした時、彼らはあることに気付いた。


「ねぇ、何かさ校門の周りにめっちゃ人いるよね?」


「確かに、何の集まりだ?」


彼女の言葉通り、校門の周りは人で溢れかえっていた。

自転車が通れず渋滞している訳ではないらしい。


「おーい、龍平君何とかしてよぉ~」


集まりの真ん中から、自分の事を呼ぶ声が聞こえた。

その声を聞いたとき、全ての謎が解けてしまった。


「あいつかよ…」


「あ!、雪村君だ!」


櫻子が集まりの真ん中に立っている、雪村進一に指を指した。

雪村進一は、性格は狂っているがかなりの美少年だ。

校門の周りに人が集まっているのはそのせいだった。


「あの!、貴方の御名前は?」


「どこの高校の人?」


「彼女いますか?」


雪村の周りには、多数の女子が群がっていた。

雪村はそれに笑顔で対応していた。


「僕の名前は雪村進一です。高校は言えませんが彼女はいません、絶賛募集中です」


女子達はその後、彼を物にしようと連絡先を聞いていた。

だが、龍平はある違和感を覚えていた。

雪村の奥にも人の集まりがあった。

主に男子が群がっていた。

この時、龍平は何となく誰がいるか予想がついており。

実際にその通りだった。


「龍平!、助けて!」


そこには、人並み外れた美貌を持つ中条あゆながいた。

あゆなも、雪村と同じような事を聞かれていた。

可哀想なので、あゆなだけは助けた。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫かな」


結局、彼らが校門から出る事が出来たのは二時間後の事だった。

その間、二人に名指しされた龍平にも注目が集まり少々めんどくさいことがあった。


「ねぇ、何で早苗ちゃんいないの?」


この場に早苗がいないことを不思議に思った櫻子は二人に聞いた。


「早苗ちゃん、何かめんどくさそうだから行かないって言われた」


雪村はそう答えた。

恐らく彼女はこうなることを予想していたらしい。

龍平は、さっそく本題に入ることにした。


「それで?、何でお前らが俺らの所に来たんだ?」


「それがね、博士に頼まれたからなの」


あゆながそう答えた。

どうやら博士が関わっていたらしい。

恐らく彼らの高校の場所も博士が教えたに違いない。


「呼んで来てくれって?」


「うん、そうなの。本当は携帯に連絡をいれようとしたけど私たち龍平の連絡先知らないからさ」


教えていなかったことを彼は後悔した。

今後、このようなことが起きないように彼は連絡先を教えた。


「ってかさ、お前ら制服姿だけど学校終わるの早くねぇか?」


自分達が終わる前からいたとしたら彼らの学校はかなり早く終わっていることになる。


「僕らは昨日から夏休みに入ってたんだよ。制服姿なのは私服だと違和感あるかなって思ったからだよ」


雪村は丁寧に答えてくれた。

とにかく、彼らは博士の所に向かった。



彼らは今、博士の研究室に向かう廊下を歩いていた。


「龍平君、僕らに彼女は何をすると思う?」


雪村の中では何かをされることは決定事項らしい。

しかし、そうかもしれない。

彼女関連は大抵はめんどくさい物なのだ。


「面倒事の依頼だと思う」


「確かに」


龍平以外の三人はそう答えた。



歩くこと数分…

博士の研究室に入ると、博士と水本早苗がいた。


「こんにちはぁ~」


「こんにちは」


すると、雪村が早苗に話しかけた。


「早苗ちゃん、何で来なかったの?」


「龍平はとっくに理由分かってるでしょ?」


つまりはそうゆうことらしい。

まぁ、あまり興味はなかったけど。


「それで?、博士は何で俺らを呼んだんですか?」


すると、彼女はポケットから五枚の紙を龍平達に渡した。


「何ですかこのチケットは?」


「温泉旅行のチケットでぇ~すよぉ~。最近はぁ~あなた方色々あってぇ~疲れが溜まってると思ったのでぇ~休ませることにしましたよぉ~」


いらねぇ…


龍平がそう思っていると、彼らは裏腹にかなり喜んでいた。


「龍平!、行くよね!?」


中でも、櫻子のテンションの高さが以上だった。

ここで、拒んでは後々めんどくさそうなので彼は行くことにした。


「龍平君が行くなら僕も行くよ」


「私も」


「私も」


満場一致で行くことが決まった。

チケットに記載されていた日付は翌日だった。

彼らは大急ぎで帰宅し、準備を始めた。



翌日…

彼らはチケットに記載されていた旅館の玄関にいた。

旅館の場所はかなりの山奥で、とても自然豊かだった。

この場所まで博士がヘリコプターで送ってくれた。

道中、しりとりをしたりと色々ゲームをして少し疲れた。


「早く部屋に行くか…」


彼らは係りの人に案内され、男女で二部屋に分けられた。

今日は彼らと数組の人しかおらず、比較的静かだった。


「疲れたね、龍平君」


「そうだな」


時刻は既に夕方を迎えていた。

今日は何もせず明日観光などをすることにしていた。


「飯まで、まだ時間はあるし風呂にでも行くか…」


龍平は先に温泉に浸かることにした。


「僕も一緒に浸かってもいいかな?」


「お前は後で入れよ…」


結局、雪村と一緒に入ることにした。

風呂に行くことを伝えに彼女達がいる部屋に向かったが誰もいなかった。


「あいつらも風呂に入ってんのか」


「これはチャンスだよ龍平君」


「何の?」


どうせ、ろくな答えではないと思うが一応聞くことにした。


「覗くよね?」


やはりろくな答えではなかった。


「お前一人で覗けよ」


そう言い残し、彼は温泉へと向かった。

雪村はその後をつけるように歩いていった。



脱衣場で服を脱ぎ、タオルを腰らへんに巻き付け彼らは温泉に向かった。


「龍平君、何でそこを隠すの?」


「見られたくないからな」


「自信がないのかな?」


「どうでもいい」


そのまま彼らは身体を洗った。

そのあと、温泉に浸かることにした。


「気持ちいいね」


「お前がいなきゃな」


雪村の存在あるないに関わらず、確かに気持ち良かった。

家の風呂ではとれない疲れがいっきに抜けていった。


「極楽だね」


「爺くせぇな」


そんな下らないことを言っていると、岩場の後ろから声が聞こえた。


「こりゃ、確かに極楽だなぁ~」


その瞬間、雪村の表情が変わった。

とてつもない驚きを感じているような顔だった。

その岩場から一人の男が姿を現した。

その男の顔はかなりの美形で雪村と変わらない程だった。

男は髪をオールバックにしていた。

顔にはいくつかの傷痕があった。


「悪いな、驚かせたな」


その男は雪村の表情を見ながら謝罪をした。

雪村がなぜ、このような表情になったのか龍平には分からなかった。


「龍平君…」


雪村は何かを言いたげだった。

しかし、雪村がそれを言う前に男が隣に来てしまった。


「隣でもいいか?」


「別に俺は構いませんよ」


「僕も構いませんよ」


すると、雪村は龍平の背かに指を回した。

龍平は、背中に指が当たるのを感じて雪村に文句を言おうとした。


「お前な…」


だが、続きの言葉は言えなかった。

雪村は彼に指文字でこう伝えていた。


彼は危険だ。


龍平は、どうゆうことかを聞こうとした時、彼は続きを書いた。


僕でさえも、彼の気配には気づかなかった…


その瞬間、龍平は男の危険度を理解してしまった。

雪村でさえも、気配を感じなかったと言うことはつまり彼が普段から気配を消さなければならない何かをしていると言う事だ。

更に、龍平も違和感を感じることがあった。

彼が移動してくるとき、音が聴こえなかった。

ボシャンボシャンとお湯が波打つような音が聴こえなかった。


「お前らは高校生か?」


色々と考えていると、男は彼らに話しかけた。


「はい…高校生です…」


「そうか、部活入ってんのか?」


「入ってないです」


その後、沈黙を迎えた。

かなり気まずい。

だが、そんな事を言っている場合ではなかった。

この男が何者かを知らなければならない。


「お兄さんは何をしているんですか?」


雪村が痺れを切らし質問をした。

すると男はこう答えた。


「俺は、世界が終わりを迎えるのを必死で防ごうとしてるお兄さんだよ」


笑いながら、彼はそう答えた。

その瞬間、雪村と龍平の緊張感は少しほどけた。


「さてと、世界を救いに行くよ」


そう言い残し、男は温泉から姿を消した。

一体何者だったのだろう?

二人に疑問を残していった。



温泉から上がり、服を着衣し、髪を乾かした。

男はその後、自分の部屋に向かった。


「いいお湯でした」


すると、部屋の窓から声が聞こえた。


『ずいぶんと長かったけど』


その声の主は男が風呂からあがるのを待っていた。


「それは、申し訳ない」


『まぁ、いいよ。君が温泉好きなのは昔からだもんね』


「お前も好きになればいいのによぉ」


『私は遠慮しておくよ』


次の瞬間、この場の雰囲気が変わった。

和やかな雰囲気から冷たい雰囲気に変貌した。


『それで、私がいる理由は分かるかな?』


「任務があるんでしょ?」


『その通りだよ、君にはこの日やってもらいたいことがある』


その人物が日付を教えると、男は直ぐに理解した。


「分かりました。殺した方がいいですか?」


『殺さなくていい。その場にいさせておいて』


「了解…」


そして、その人物は窓から飛び降りた。


『頼んだよ、一番…』


その声に、一番と呼ばれた男は…


「はい、黒鬼様…」


男は、黒の法衣を着衣し、黒色の鬼のお面を着け姿を消した。

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