第4章 22話 『初めましてと鬼は言う』
7月7日午前12時43分
櫻子と龍平は龍平の家へと向かっていた。
あの後、三人共帰り櫻子も帰宅してもいいと言われたので帰宅することにした。
結局、あゆなに氷柱を放たれた理由はいまだに分からなかった。
「ねぇ、龍平…めちゃくちゃさ面倒くさいお願いしてもいい…」
辺りは暗く少し不気味だったが、月が出ておりそれのおかげで彼女の表情を見ることは出来た。
その時の彼女の表情は、少し頬が赤くなっており何か恥ずかしそうな顔をしていた。
龍平は少しだけドキッとしてしまった。
それほどまでに彼女は可愛らしかった。
「いいよ…」
「私さ…この闘いが終わるまで龍平の家に住んでもいいかな…」
「はい?」
彼女の面倒くさいお願いが彼の予想とはまるで違っていた。
確かに、このお願いはめちゃくちゃ面倒くさい。
「私…パパとママが死んじゃったから、これから一人なの…、一人は怖いよ…」
一人が怖い…
龍平にはあまり分からなかった。
彼は生まれた時からずっと一人がだった。
少し大きい一軒家で数年間一人ぼっちだった。
けれど、今の彼女を一人にはしたくなかった。
「いいけど…、お前はいいのか?」
「何が?」
「俺が…お前の事を襲うかもしれないんだぞ?」
「どうして?」
彼女は首を傾げていた。
やはり、気付いていないらしい。
「お前はさ、結構可愛いし、優しいし、明るいし、あと…胸が大きいし」
最後の所は声を小さくしながら言った。
つまりは、女性としての魅力がとてつもないほど彼女にはあるのだ。
「龍平って私のことそうゆう目で見てたのかな?」
「ノーコメント…」
「本当に龍平は可愛いね…」
クスッとしながら彼女は彼にそう言った。
本当にズルい女だ。
彼女は言葉の続きを言い始めた。
「別にさ、龍平に襲われても私はいいよ…、龍平になら私の初めてあげても…いい…よ…」
先程よりも顔を真っ赤にしながら彼女はそう言った。
林檎並みに顔を赤くしていた。
「そうゆう事を言うんじゃねぇ!」
そのあと、色々な言い合いをしたが、龍平の方が折れ、櫻子は彼の家へ居候することになった。
「これから宜しくね、龍平…」
当分、龍平が気を休める所はない。
とりあえず、昼間に布団を買いに行くことを決意した。
「なぁ…櫻子…」
今後の事を話そうと思い、彼女の方へと振り返ると彼女はその場に蹲っていた。
「う…う…、急に…どうしたの…」
彼女は誰かに何かを呟いていた。
「おい…どうした櫻子?」
すると、彼女は立ち始めた。
何事もなかったのかと思っていたが、それは違っていた。
彼女の片眼の色が黒ではなく、緑色をしており。
更に、鬼の波動と色が強まっていた。
『初めまして…黒崎龍平君…』
そこには鬼が立っていた。
櫻子の肉体を乗っ取り、突然鬼は現れた。
「櫻子!、大丈夫か!」
聞こえていることを信じ、彼は櫻子に話しかけた。
『大丈夫だよ…別に僕は君に何かをするつもりはないよ』
「俺にはだけど、櫻子には何かするんだろ?」
『櫻子ちゃんにも何もしないよ。僕は彼女を護るために生まれたものだから』
それを聞き、彼は少しだけ安堵した。
だが、『鬼』が現れた理由が分からない。
自分たちに危害を加えるつもりがないなら何故現れたのか。
「何で現れたんだ?」
『君の中にいる『夜叉』と話しがしたくてね』
その直後、龍平の身体の内部から何かが込み上げてきた。
とても熱い、それは痛みも伴っていた。
「な…何だ…これは…」
龍平もその場に蹲った。
そして彼も意識を失った。
最後に彼が聞いたのは…
『俺様に肉体を貸せ…』
『夜叉』の声だった。
龍平と櫻子の意識はその場にはなく、あるのは二体の『鬼』だけだった。
『久しいね夜叉、元気にしていたかい?』
『まぁまぁだな、お前は?』
『僕もまぁまぁかな』
暫く世間話をしたあと『夜叉』から本題に入った。
『それで?、一体何の用だ?』
『惚けないでよ、本当は分かってるでしょ僕が呼んだ理由…』
『約束の日のことか…』
『君は龍平君にその事を話したのかい?』
『まだだ…お前は?』
『まだだよ、でも早くしないと奴らが復活したら今の人間達じゃ勝てないよ…』
『そうだな…』
『それと、龍平君って…』
『話しは終わりか?』
『うん…これで終わりだよ…』
『そうか…』
『最後に言っておくね、僕はどんな手を使っても櫻子ちゃんを護るよ。例え、龍平君を死なせたとしてもね』
『それがお前の使命だもんな…』
それを最後に彼らは宿主の中へと戻っていった。
次に彼らが目を覚ましたのは龍平の家の玄関だった。
どうやら『鬼』達は龍平の家に向かいながら話しをしていたらしい。
「櫻子…起きてるか?」
「うん…起きてるよ」
彼らが何の話しをしていたのかは少しだけ気になるが、龍平の疲労に比べたらどうでもいいことだった。
そのまま彼は眠った。
「もう…しょうがないな…」
幼なじみの少女は彼を部屋へと運んだ。




