表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
83/113

第4章 21話 『ガールズトークと悪巧み』

雪村進一と黒崎龍平が殺し合いをしている頃…

櫻子が休んでいる部屋で少女達三人は静かに男性陣の帰りを待っていた。

櫻子は待っている間、中条あゆなと水本早苗を交互に見ていた。

一番長く見ていたのは中条あゆなだった。

龍平の話しを聞いていた時に感じた怒りは既に消えかけていた。

櫻子はまず会ったら、一発蹴りをいれようとしていたが、彼女の美貌に傷を入れることを躊躇っていた。

それほどまでに今の中条あゆなの美は研ぎ澄まされていた。

前まで団子にしていた髪はほどかれ、今では腰辺りにまで伸びていた。

日本人とは思えない程の肌の白さだった。

以前なら雪のように白い肌と言っていたが、今は雪そのものだった。

体型もそこら辺のグラドルより美しかった。

櫻子は少しばかり落ち込んでいた。


「はぁ…、こんな子達がいたんじゃ私には勝ち目何てないよね…」


自分だってもし男だったら。

こんな可愛い子達がいればそちらに目移りしてしまう。

それぐらい彼女達は綺麗だった。


「どうしたの、具合悪いの?」


こちらの表情の変化に一番早く気付いたのは水本早苗だった。


「あ…、何でもないです…」


「二人の帰りが遅いこと心配してるの?、確かに少し遅いよね…」


かれこれ30分程戻って来ないのだ。

もしかして何かに巻き込まれたのではと思っていても、今の自分の身体では行こうにも足手まといだ。


「大丈夫だよ…、二人とももうすぐ帰ってくるよ」


すると、中条あゆなが口を開いた。

彼女の声もまた以前とは違っていた。

鬼と同化したことにより、彼女の身体は少し人とは異なってしまった。


「そう…ですね…」


暫くの間、部屋には沈黙が流れた。


気まずい…


三人共、同じことを思った。

入隊したての櫻子はともかく、この二人が気まずいのには訳があった。

『雪鬼村』での闘いがあり、二人は多少は言葉を交わす間柄にはなったが、それだけだった。

連絡先も交換しておらずプライベートでの交流など全くなかった。

このままではまずいと思い、水本早苗は櫻子に話しかけた。


「ねぇ…、櫻子ちゃん…あのあとさ、アイツから何て返事が来たの?」


櫻子が思い出すまでに数秒かかったが彼女が何のことを言っているのかは簡単だった。

『黒月組』が襲ってきた時の爆弾騒ぎの事だった。


「龍平からは、明確な答えは貰えなかったよ」


少し嘘をついた。

だが、櫻子はこうすることを選んだ。

今はよくてもいつかはライバルになるかもしれないのだから。

いつから自分はこんなにも彼への愛が強くなったかのは自分でも分からなかった。


「何の話しをしてるの?」


唯一この場に居て話しが分からない中条あゆなは首を傾げていた。

仕方ないので、櫻子は説明することにした。

所々は噛み砕いて説明した。

あまりにも、恥ずかしい出来事だったから。


「なるほどね…、つまり櫻子ちゃんは龍平の事が好きなんだね…、青春してるねぇ~」


「と言っても私の恋は実ることはないんだけどね」


少しだけ悲しかった。

自分がどれだけ、彼に尽くし、彼への想いがあろうと、彼には届かない。

彼もまた、恋をしているから。


決して実ることのない恋に…


決して報われることのない想いに…


決して会うことは出来ない彼女に…


そう考えると、ある意味で彼が一番辛いのかもしれない。

だから、復讐という方法でその辛さを忘れようとする。

この基地に居る者は皆そうかもしれない。

満たされない何かを満たすために人の血を浴びているのかもしれない。


それが満たされることはないのに…


すると、水本早苗がニヤニヤしながら会話に入ってきた。


「でもいいの?、櫻子ちゃんがそんなに弱気だとあゆなちゃんに龍平とられちゃうかもよ…」


「どうゆうこと?」


「その言葉の意味通りだよ。あゆなちゃんも実は狙ってたりして…」


「早苗ちゃん…、<氷柱よ、彼女に…>」


最後まで言われる前に水本早苗は中条あゆなを止めた。


「あのさ、私が龍平を好きになんてならないよ」


中条あゆなは明確に彼への想いを否定した。

これで、話しが終われば良かったのかもしれないのだが、水本早苗は少ししつこい女だったのでこの話題はまだ続いた。


「でもさ、あゆなちゃんって結構龍平のこと見てるよね?」


「それは、彼の闘い方を参考にしてるだけ」


「絶対嘘だよ、それだったらさ『雪鬼村』でさ二人は何の話しをしてたの?、今日こそは答えてもらうからね」


「何の話しもしてない!、はい!、この話しは終わり!」


少し強引に中条あゆなは話しを終わらせた。

水本早苗の中で疑惑は確信に変わろうとしていた。


「ねぇ、中条さんは…」


何かを聞こうと思い、櫻子は話しかけたが中条あゆなに遮られた。


「あゆなでいいよ、私も櫻子ちゃんって呼ぶからさ」


「分かった!、あゆなちゃんは本当に本当に龍平を好きじゃないんだよね?」


「そ、それは…」


続きを言おうとしていたあゆなを今度は櫻子が遮った。


「私さ、龍平の幼なじみとして結構色々と攻めてるのに全然振り向いてくれなくて落ち込んでるのに、更にあゆなちゃんまでライバルだったら最悪だよ。だって私に勝ち目ないから…、だからさ本当に違うんだよね!?」


「う…う…うん…」


これには流石の水本早苗もあゆなへの助け船を出すことにした。


「はいストップ!、流石にさ、この攻めかたは駄目だよ櫻子ちゃん。でも、ちゃんと答えないとだめだよあゆなちゃん。あなたは龍平をどう思ってるの?、好き?嫌い?」


顔を赤くしながら、あゆなは答えることにした。

今、どう思っているかを。


「わ…私は…龍平が…」


しかし、ここでタイミング良く、いやタイミング悪く扉が開き彼らが帰って来た。


「ただいま…、遅くなってごめんな、少し道に迷ってさ…」


彼らの手には合計五本のジュースがあった。

今のあゆなにはどうでもいい話しだったけど。


「それで、何の話ししてたんだ?、俺がどうとか…ん?、あゆな顔真っ赤だぞ風邪引いてんのか?」


すると、あゆなの回りに数本の氷柱が生まれた。

全て殺傷能力はなく、人に当てても少し吹っ飛ぶ程度だった。

そのまま彼女は彼らに氷柱を浴びせた。


「え…」


雪村進一と黒崎龍平は訳が分からないまま、彼女の氷柱を浴びた。

彼らは自分たちが遅かったことへの罰だと思いそれらを受けていた。


やりすぎじゃね?


あゆなを除く全員がそう思った。




自分の研究室で彼女は、パソコンに色々なデータを入力していた。

最近の研究成果や失敗など色々なことだった。

すると、研究室の扉が開かれる音がした。

日本刀を携えた一人の男がボロボロになりながらも帰って来た。


「お帰りも言ってくれないの?」


その男は研究室に一人いた少女にそう聞くと、彼女はこう答えた。


「おつかいもろくに出来ない役立たずさんですからねぇ~赤城隊長はぁ~本当に駄目駄目ですねぇ~」


丸眼鏡を着けた清水遥は赤城隼人を罵った。

彼が、自分の任務を果たせていないことに少し怒りを覚えたが、もう一つの任務を果たせたので不問にすることにした。


「手厳しいな…、僕らなりに結構頑張ったのにな」


「まぁ…いいですけどね。とりあえずぅ~報告をお願いしますねぇ~」


そして、赤城隼人から事の詳細を聞いた。

因みに吉野裕介は別室で手の治療を受けていた。

一体いつになったら彼が健康体で帰ってくるのか楽しみである。


「なるほどねぇ~、『黒鬼』の能力がぁ~複数ですかぁ~」


「かなり厄介だよね」


赤城隼人達が持ち帰れた情報の中でかなり大きいものの一つはこれだった。

だが、清水遥の表情は少し曇っていた。


「それだけですかぁ~、あなたが持ってきた情報は。もしそうだとぉ~したらぁ~貴方は本当に使えませんよぉ~」


「何でだい?」


机の上のお茶を一口飲み、彼は聞いた。

この情報のあるかないかで戦局は大きく変わる。


「それぐらい普通は予想がつきますよ…、十師団の猛者を率いているんですからそれぐらいはないと下剋上されたらたまりませんからねぇ~」


既に彼女はこのことを考えていた。

今回の赤城隼人の任務は恐らく彼女の予想が合っているかの確認だった。


「あと、もう一つある…『約束の日』それと『賛成派』と『反対派』って言葉が出てきたよ」


次期総理候補の男と『黒鬼』が話していたことを伝えた。


「『約束の日』ですか…」


「一体何のことだい?、君は知ってるだろ?」


「さぁ~分からないですよぉ~」


そのまま彼女は彼に帰宅することを許可した。

少し汗臭いのでついでに風呂に入ってもらうことにした。


「博士…お互いに悪い奴同士仲良くしようよ…」


普段の彼とは正反対の悪い笑みだった。

これが赤城隼人の本性だと言わんばかりだった。


「僕も最近はこそこそ動くのが好きでさ、僕も君も同じ秘密主義者だね」


「そうなんですねぇ~」


「君でしょ…あの日『七人衆』の一人を試験会場に入れたの、ちゃんと監視カメラに残ってたよ」


「消した筈ですけどねぇ~」


反論することなく彼女は自分の過ちを認めた。


「まぁ、何で君がそうしたのかは聞かないでおくね」


「ありがとうございますねぇ~」


「それじゃあ…また明日…」


そのまま赤城隼人は研究室を後にした。

赤城隼人が居なくなった後。

清水遥は高笑いをした。


「やれやれ、あれだからめんどくさいんですよねぇ~」


パソコンを開き、あるフォルダを開いていた。

そこには以前かかれていた計画の進捗具合が記されていた。


「必ず殺しますよ…赤城隼人…貴方も例外ではありませんからね」


研究室は清水遥の笑い声で満たされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ