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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 18話 『幻影』

赤城隼人は息を吸い込み、口を開いた。


「結論から言うね、僕らは『黒鬼』に勝てない」


開口一番彼が放った言葉はこれだった。

この言葉に吉野裕介は強く反応した。


「どうゆうこと?、そりゃ確かに俺の能力は防がれてるけど隼人の刀でゴリ押ししたら奴の刀は切断出来るでしょ」


普段の赤城隼人ならそうするが、『黒鬼』にはそうすることが出来なかった。


「俺が隙を作るから隼人は…」


「そうゆうことじゃないんだよ裕介…」


しかし、赤城隼人は吉野裕介の言葉を遮った。

そして、彼の考えを伝え始めた。


「いいかい…、今から奴の能力を話すよ。

奴の能力は…複数ある…」


その事を聞いたとき、吉野裕介の表情は驚きを隠せていなかった。


「どうゆうこと?、奴の能力は空間を造る能力でしょ?」


赤城隼人も当初はそう思っていた。

しかし、闘っているうちにその考えが間違っていたことに彼は気付いたのだ。


「僕もそう思ったけど、おかしかったんだよ。

まず、奴の刀が切断出来ない理由を説明するよ。

多分あいつは、刀の『硬度』を高めてたんだよ」


切れ味を強化する。そんな能力があるならあっても可笑しくない能力だ。

彼は話しの続きを始めた。


「僕と闘う時に自分の刀の硬度を強化しとけば、そう簡単には折れないからね。僕の刀には斬れない物はないと思ってたけど、相手が硬度をあげてたらどうしようもない」


その時、赤城隼人の表情は少し暗くなった。

自身の能力では、対処することが出来ないことに対して悔しいのだ。


「次は、裕介の能力を消してる方法を話すね。

あれは別の空間に飛ばしてるんじゃなくて、周りの熱を下げてるだけだよ。裕介の能力は熱を操って発火させてるんだから熱を下げたら簡単に火を消せるからね」


「そういうことか…」


だが、赤城隼人はこの答えは違っていると思っていた。

恐らくは…


『残念だよ…、赤城隼人君はもう少し賢いと思ってたけど期待外れだよ』


「やっぱり、違ってるよね」


『答えは二酸化炭素の濃度をあげてるからだよ』


赤城隼人は薄々この答えに気付いていた。

吉野裕介の放った火が消えた時、音がして消えたの見た彼は学生の時に行った実験のことを思い出した。

二酸化炭素の充満したビンの中に火のついたマッチを入れたらポンと音をたてて火が消えた。

そんな経験があったので、彼はもしかしたらと思っていたがまさか本当に当たっているとは思わなかった。


「つまり、僕の刀も裕介の火も効かないチート野郎だよ。僕らじゃ勝ち目はないよ」


それに奴があといくつ能力を持っているかは未知なのだ。


『そうなるね、つまらないなもう少し楽しませてくれよ』


黒鬼は一気に距離を詰めてきた。

恐らくは赤城隼人と吉野裕介でなければ反応出来ないであろう速度だった。

実際に赤城隼人の反応が遅ければ、彼は殺されていたかもしれないのだ。

漆黒の刀が赤城隼人の首筋に触れかけていたのを彼の刀で防いだのだ。

そのまま、黒鬼は刀を手前に引き赤城隼人を心臓を突き刺そうとした。

この攻撃も間一髪、自身の刀で防いだ。

暫くの間、膠着状態が続いたがそれに幕を閉じたのは吉野裕介の放った火の虎だった。

虎は黒鬼の肉体を喰い裂こうと牙を向けながら黒鬼に飛びかかったが、黒鬼の刀によって真っ二つに斬り裂かれてしまった。

その隙に赤城隼人は黒鬼から距離をとった。


「はぁ…はぁ…、危なかった。ありがとう裕介」


「いいよ…それより、この空間から逃げる方法を考えないとな」


すると、彼らの目の前に大きな亀裂が入った。

そのまま亀裂は広まりやがて一つの大きな穴となった。

そこから黒い鬼のお面を着けた十人の集団が現れた。


『紹介しようかな彼らは…』


紹介など不要だった。

この状況で現れる十人の集団など一つしかない。


『黒鬼十師団だよ』


赤城隼人と吉野裕介の生存は絶望的だった。


「最悪だね」


「本当だよ」


そう言った後、彼らは直ぐに距離をとろうとしたが、


『逃げられませんよ。<影よ、彼の者達の影を捕らえよ>』


師団の一人の能力により、動きが一瞬拘束されてしまった。

彼らはお互いの能力でそれを破り動き出そうとしたが、既に遅かった。

止められていた一瞬の隙に残りの九人全てが襲いかかってきた。


『隼人兄さーん、受けてみてくださいねー。

<斬撃よ、彼の者を斬り裂け>』


うららの刀から四つの斬撃が放たれ、それを捌こうにも他の攻撃に対処しなければならないので致命傷になる物だけは防ぎ他は喰らうことにした。

斬撃を喰らい彼の動きは少し鈍くなってしまった。


『終わりだ』


師団の三人が口を揃えて、こう言い放った後刀を振り下ろした。


「殺られてたまるか…妹を殺すまでは…」


斬られた所の傷などお構いなしに、彼は向かってくる刀を全て切断し、体勢が崩れた隙に三人の首と頭を斬り離した。

残り七人…


『やるなー、流石隼人兄さーん』


『うらら真面目にやれ、次は私が行く援護しろ』


大鎌を持った二番は、そのまま赤城隼人の元に飛び出した。


「俺の方にも来てくれよ。<火の鎖よ、彼の者を束縛しろ>」


吉野裕介の掌から火で出来た鎖が二番に向けて放たれた。

その鎖はそのまま二番を束縛したが、


『もーう、めんどくさいな』


うららは、刀で火の鎖を斬り裂いた。

そのまま近距離で吉野裕介に向けて一つの斬撃を放った。

直ぐ様、火の壁を造り斬撃を防いだが二番の束縛が解けてしまった。

そのまま二番は赤城隼人に斬りかかった。


「悪いけど、君の相手してる場合じゃないんだよ!」


斬りかかってくる大鎌を刀で防ぎ、そのまま大鎌を切断した。


「さっさと、そこを退いて…」


二番の耳元でそう呟き二番の胴体を斬り裂いた。

そして、うららの元へ距離を詰めた。


「悪いけど、君だけは絶対に殺してやる!」


赤城隼人はうららに刀を振りかざした。

うららは斬撃を纏わせた刀でそれを防いだ。

隼人は別の方向から斬りかかったが、その全てを防がれてしまった。


「拉致があかないね…」


隼人は腰に着けていた鞘を手に持った。

そのまま、うららの鳩尾当たりに当てようとしたが、それも防がれてしまった。


『残ねーん、でしたねー兄さーん』


「そうでもないよ」


右手に持っていた刀を身体を捻りその勢いを駆使しそのままうららの頭部めがけて放った。

これには、うららも反応しきれず頭部の真ん中に隼人の憎悪が込められた憎しみの刃を喰らってしまった。

その衝撃は凄まじく、首が千切れる程の威力だった。


「やっと、殺せた…」


残り五人…


「なぁ…隼人、何か可笑しくないか?」


残り半数は切った所で吉野裕介は何かが可笑しいことに気付いた。


「はぁ…はぁ…はぁ…、どうしたの?」


先程の闘いがあり、赤城隼人の息切れはかなり酷かった。

既に腕は痙攣をしていた。

刀を握っているだけでもかなり辛そうだった。


「こいつらさ…弱すぎないか…」


その言葉の後、霧が晴れるかのように十師団の姿形が消えていった。

今まで殺していた奴の死体や返り血も消えていった。


「まさか…、これって」


続きを言おうとしたが、別の人間によって言われてしまった。


「そうだよ、俺の幻影だよ。こんなのに引っ掛かるなんてあんたら大したことないな」


霧が晴れた先にいたその人物によって彼らは幻影の中で闘っていたのだ。


「月影雅人…なぜここにいる?」


すると、月影雅人は笑みを浮かべながらその問いに答えた。


「俺は、あの騒動の後黒鬼十師団に入ったんだよ。と言っても一番下の十番だがな」


「そんなことは、どうでもいいよ。奴はどこに行った?」


赤城隼人と吉野裕介は姿が見えなくなった『黒鬼』を探していた。


「黒鬼様なら俺が入ったと同時に空間から出たよ、俺はこの穴を通ってでるよ。あのお方の計らいでお前らの分も作られてるよ。楽しませてくれたお礼だってよ」


そのまま月影雅人は穴を通っていった。

彼らも指示された穴を通り元の空間へ戻った。



「俺ら弱いよな」


元の空間に戻り、基地に向かっている途中。吉野裕介は唐突にそう言い出した。


「そうだね…、僕らは色んな人の為にもっと強くならないとね」


「黒鬼に一撃入れた龍平君凄すぎでしょ」


「そうだね、彼は凄いよ…」


そのまま彼らは基地へ戻った。

途中、何度か警察に見つかりかけたが何とかなった。

彼らの長い夜の闘いは今やっと終わった。

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