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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 16話 『想定外の闘い』

赤城隼人と吉野裕介は窓際に立っているその人物を眺めていた。

彼らはお互いに何時でも動けるように自身の武器に手を回していた。


『さてと、あなた方の目的は何ですか?』


既に知れていることを『黒鬼』は訊いてきた。

その事に赤城隼人と吉野裕介は少しだけ笑った。


「決まってるでしょ、お前を殺すためだよ」


殺意を剥き出しにし、吉野裕介は今にも飛び掛かりそうだった。


「僕も彼と同じ意見かな…、これ以上鬼ごっこをするのは面倒だからね。毎回君の所に行くのに僕の友達を大勢連れていくのはしんどいからさ」


赤城隼人は穏やかな口調だった。


『なるほど…、どうやらあなた方とは分かりあえないらしい。誠に残念です。あなた方を殺しますね。

<鬼よ、彼らを我が空間へと連れて行け>』


すると、彼らの目の前に1つの穴が開いた。

それは、大人の男性一人を通せるほど広いものだった。


『ここなら死人も出ませんよ…』


そう言い残し、黒鬼は穴の中へと消えていった。

続いて吉野裕介が入り、最後は赤城隼人だけだった。


「先程話した件、了承してくれますよね?」


椅子に座っていた彼にその事を訊くと彼はこう答えた。


「あぁ…、黒鬼討伐隊は正式な国直属の部隊として認めよう」


その事を聞くと、彼はそのまま穴の向こうへと行った。



穴を通ると、そこは先程までいた部屋と同じ作りだった。

唯一違う事は椅子に座っていた彼が居ないことだけだ。


「ここは…」


お互いに同じ事を『黒鬼』に訊いた。


『ここは、私達がいる空間とは違う別空間です。

ここには私達以外の人間はいないので私達の闘いに巻き込まれるような方は現れませんよ』


この事を聞いたとき赤城隼人は後悔した。

『黒鬼』が造った空間に入ってしまったことを。


最悪の状況かもね…


もし仮に、『黒鬼』がここで逃げ出したら彼らはずっとこの空間にいることになってしまう。

それだけ避けないと。

そんな考えを見透かしているかのように黒鬼は赤城隼人に向かってこう言った。


『大丈夫ですよ赤城さん。確かにあなた方以外なら赤城さんが考えているような事をしますが、あなた方にはしません。私はあなた方を認めていますから。あなた方とはちゃんと闘って殺したいですから』


この時、彼らは少しだけ安堵した。

そして、彼らは笑った。

『黒鬼』の能力を遂に知ることが出来たのだから。

『黒鬼』の能力は別の空間を形成して、そこに人を送る能力だ。

拘束等には向いているが闘いには向いていない。


「隼人…これは僕たちの勝ちでいいのかな」


吉野裕介も状況は理解していた。

しかし、赤城隼人は妙な違和感を覚えていた。


何かがおかしい…


その事に気付けず彼らの闘いは始まってしまった。


「先手必勝だよね、<熱よ、龍となり彼の者を喰い殺せ>」


吉野裕介がそう言い終わると、四頭の龍が現れた。

以前出した龍よりも大きく強そうな印象だった。


「そうだね、<我が鬼よ、刀に纏え>」


赤城隼人も能力を使用し始めた。

極限まで斬れ味を高めた。

最初に動き始めたのは吉野裕介だった。

四頭の龍を一斉に放った。

四頭の龍は『黒鬼』を喰い殺すべく口を大きく開けながら『黒鬼』の元へと迫っていった。


『これは面倒くさそうだね。

<火よ、消えろ>』


左手を前に持っていきそう言った。

すると、一瞬で四頭の龍は姿形を消してしまった。


「なるほど、別の空間に飛ばしたのか。まぁ…もう遅いけどね」


吉野裕介の視線の先には『黒鬼』の背後に近付く赤城隼人の姿が映っていた。

赤城隼人は刀を鞘から抜き、斬りかかった。

『黒鬼』も刀を抜き、それに反応した。

自身の胴体が切り裂かれる前に『黒鬼』はそれを自分の刀で防いだのだ。

この瞬間、赤城隼人の表情は少しだけ緩んだ。


「悪いけど、刀は切断させてもらうよ。弁償代は君の墓の中に入れておくよ」


そのまま彼は『黒鬼』の漆黒の刀を切断しようとしたが、どれだけ力を込めても斬れなかった。


「何故…」


吉野裕介と赤城隼人が同時に感じた疑問だった。

彼の能力で強化された刀なら『鬼鉱石』でさえ真っ二つに出来ることは既に証明されていた。


『残念でしたね、さてとあまり近づかれると殺してしまいますよ』


『黒鬼』は身体の近い、赤城隼人の鳩尾に拳を入れようとしてきた。

すかさず彼は身体を捻り拳が鳩尾に入るのを避け、後ろの方へと飛んだ。


「どうゆうことだ…何故斬れない」


「分からないけど、今は奴から離れよう。それともう少し広いところで闘いな」


そうして彼らは窓の外へと出た。

室内より、外の方が闘い安いと踏んだ彼らは外に向かった。

それに続くように『黒鬼』も窓の外へと出た。


「さてと、どうやって奴の懐に入り込む?」


赤城隼人は隣にいる吉野裕介に訊いた。

奴はやはり、今まで闘ってきた敵とは一味違っていた。

動きに無駄がない…


「そうだな…、奴が造れる空間にも限りがあると思うから。限界まで炎の攻撃を続けて空間を造れなくなった所を隼人が攻撃しにいこう」


的確に吉野裕介は指示を出した。

とても良い案だが、不安要素が多すぎる。


「『黒鬼』の刀を切断出来るかは分からないよ…」


これが一番の不安要素だった。


「やるしかないよな…いくぞ…」


そう言うと、吉野裕介は火を放ち始めた。

色んな動物を出しては消され、出しては消されを繰り返していた。

赤城隼人の緊張は最大に達していた。

いつか来るであろうチャンスを逃さないために。

そして、チャンスは訪れた。

『黒鬼』は吉野裕介の炎を消しきれず、少しだけ当たってしまった。

これを彼は逃さなかった。

直ぐ様、『黒鬼』との距離を縮めもう一度斬りかかった。

そして、それをまた防がれてしまった。

『黒鬼』の刀を切断するため、彼は力を込めた。

しかし、それでも『黒鬼』の刀は折れなかった。


「吉野君…、僕に当たっても構わないから炎を放ってくれ」


「言われなくてもそうしてるよ」


すると、先程の龍を越えるサイズの特大の龍を形成し、『黒鬼』に向けて放った。

これで終わる事を信じて、彼らの希望を込めた一撃だった。

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