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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 15話 『交渉』

櫻子が目を覚ますとそこには白い天井があった。

自分が置かれている状況を把握するのにそれほど時間はかからなかった。


「櫻子…起きたのか?」


彼女の近くで龍平は櫻子が起きるまで待っていた。

櫻子は自分の右手に何かを感じたので見てみると、彼が握ってくれていた。

その事に少しだけ顔を赤くした。


「おはよう…、ところで今何時?」


この病室には窓がなく、現在何時なのかが分からないのだ。


「今は、午後10時だよ。ここは『基地』って呼ばれてるところ。『黒鬼』を殺すために集められた人がここには大勢いるんだよ」


あのあと、彼は博士に連絡しこの部屋を空けてもらうことにした。


「そっか…、パパとママは…死んじゃたんだよね…」


泣きそうだったが、彼女は堪えていた。

彼女も強くなると誓ったのだ。


「ごめんな…俺のせいで…お前の両親が…」


彼女は龍平の言葉を遮るように話し始めた。


「そんなことないよ、龍平のせいじゃないから。私のせいだよ…」


お互いに自分のせいだと言い張り始めて彼らは少しだけ笑った。

すると、ドアを叩く音がした。

どうぞ、と答えるとドアが開かれ一人の人物が入ってきた。


「今晩はぁ~、お身体の具合は大丈夫ですかぁ~?」


独特な喋り方と、ボサボサの髪そして丸眼鏡。

それらの3つが合わさった人物を彼は一人しか知らない。


「櫻子は分からないですけど俺はもう大丈夫ですよ清水博士」


「それは良かったですねぇ~、まぁあまり龍平君はどうでもいいですけどね。私が用があったのは櫻子ちゃんの方ですから」


清水博士は、櫻子の方に目線を変えにっこりと笑った。


「初めまして、河村櫻子さん。私の名前は清水遥でぇ~す。一応龍平君から一通りのことは聞いてますよ」


「初めまして、貴方がよく龍平の話しに出てきた清水博士何ですか?」


「どんな出方をしてるかは少し気になりますが確かに私が清水博士ですよぉ~」


軽く挨拶を交わした後、清水博士は本題に入った。


「さてと、櫻子ちゃん…早速ですが本題に入りますねぇ~。単刀直入に言うとですねぇ~櫻子ちゃんには私たちの仲間になって欲しいんですよぉ~」


「どうゆうことですか?」


「つまりはぁ~、『黒鬼』達を殺す為に力を貸してほしいと言うことですよぉ~」


彼女のこういう所は凄いと思う。

言いづらいことを直ぐに言えるこの性格は少しは見習った方がいいかもしれない。


「殺す…」


「はい…、櫻子ちゃんはぁ~、『赤鬼』ですからねぇ~。是非私たちの仲間になって欲しいんですよぉ~」


そのあと、博士の『鬼』の能力の位を簡単に説明した。


「なるほど…、私の能力は一番強い位に位置してるって訳ですよね」


「はい…、そうなりますねぇ~」


少しだけ時間が欲しい。

そう告げると、清水博士はそのまま部屋から出ていってくれた。

龍平も出るべきだと思い、出ようとしたが櫻子に止められてしまった。


「龍平はさ、どうして欲しい?」


「俺の意見を言うなら、一緒に闘ってほしい。

けど、櫻子には平和な所で穏やかに過ごしてほしいかな。それに、この『基地』に居たら絶対に敵を殺すことになるからさ、櫻子にはそんなことをしてほしくないんだよ」


「そっか…、でも私は『鬼』の世界に足を踏み入れてしまった…。私はもう何も失いたくないから…。龍平…一緒に闘ってもいい?」


もう止められないな…


龍平は覚悟を決めた彼女の意思を尊重することにした。


「いいよ…」


そして、彼女は黒鬼討伐隊の一員となった。



その頃…

首相官邸で一人の男が椅子に座っていた。

少し微笑みながら、今宵の満月を楽しんでいた。


「岩本前首相の死から大分経ったな…、あれから国を纏めるのに時間が掛かった。更に銀行の一件で経済が破綻しかけた。全くあれは危なかったな」


手に持っていたグラスにワインを注ぎ込み、一口飲んだ。


「まぁ…私が内閣総理大臣になるための試練だったと思えば楽なものだ。あの二つの件で私の能力を頭の固いジジイどもに教えたのだからな。私が内閣総理大臣となり、この国を変えてやる」


この男は以前の総理大臣の側近を勤めていた一人の政治家だった。

岩本浩三が死んでから、彼は国を建て直すのに尽くした。

その業績が認められ、彼は翌日の昼には次の総理大臣となるのだ。

そんなことがあり、彼の気分はかなり良かった。

その人物が来るまでは…


『次の内閣総理大臣の決定おめでとうございます』


彼が座っていた椅子の真後ろの窓からその人物は現れた。


「お前は…」


『私は『黒鬼』…、その名前を言えば貴方なら分かりますよね?』


彼はその名前を聞き、震えが止まらなかった。

次は自分が殺されるかもしれないのだから。


「何の用だ?」


『話しが早くて助かります。まず、これ以上公安の方をこちらに放つのはやめてくれませんかね、鬱陶しので。後、貴方は『賛成派』ですか?、それとも『反対派』ですか?。この答えによって貴方が死ぬか生きるかが決まりますよ』


「一体何のことだ?」


『惚けるのは止めてください。早くしないと『約束の日』がもうそこまで来ていますから』


「ふざけるな…『約束の日』のことは分かっている。だからと言って人を殺していい筈がないだろ!」


彼は激怒した。

『黒鬼』が今まで殺してきた数は彼の耳にも入っていたからだ。


『私も人を殺したくはありません。しかし、私も貴方同様にこの国の未来を護るためです』


「そうか…、私は『反対』に入るよ」


『ありがとうございます…私は貴方を殺さなくて済みます』


「礼を言うな、それに君は今から死ぬのだからな」


彼がそう言い終わると、正面にある扉から二人の男が入ってきた。


「さてと、鬼ごっこはこれで終わりにさせてもらうよ…」


「久々に暴れようかな…」


『赤城隼人…吉野裕介…なるほどこれは想定していませんでしたよ』


満月の下、彼らの闘いの幕は上がった。

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