表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
70/113

第4章 8話 『瀬菜の報告』

黒崎龍平と河村櫻子が帰宅し終えた頃…

とあるマンションの一室に彼女達は集まっていた。

電気はつけず、窓から入る月明かりだけが頼りだった。


『それで?。結局貴女達は黒崎龍平を殺せてないの?』


白い狐のお面を着けた少女は彼女達にそう問いかけた。


「申し訳ございません。私と沙羅の力では彼には及びませんでした」


小林彩は謝罪した。

自分達を見つめるその目から逃れるために。


『はぁ…まぁいいよ。そもそも貴女達に期待してないから。彩の方は私の毒に適応したからましかなって思ってたけど』


白い狐のお面を着けた少女は少し残念そうだった。


「次こそは瀬菜様のご期待に応えるよう精進します」


高松はそう言い終え今回のことを締め括ろうとしたが。


『貴女達に次はない…』


次の瞬間、突然高松の口から血が溢れてきた。

その血の量は口の中を切ったなどの量ではなかった。


「な…何故…」


そして高松沙羅はこの世から去ってしまった。

その時、小林彩は不思議に思っていた。

どうして自分は殺さないのか…

そんなことを考えていると瀬菜はそれに気づいたのかゆっくりと話し出した。


『貴女を生かしてる理由は、ネタばらしするためだよ』


「どうゆうことですか?」


『月影雅義が貴女達の学校を襲った理由は黒崎龍平がいたから…だったらさ彼らはどうやってその場所を特定したんだろうね?』


その言葉を聞き、彼女は全ての真相に気付いてしまったのだ。自分が本当に復讐するべき相手は彼ではなく目の前にいる女だということに。


「お前のせいで…」


続きを言おうとしたが身体中が痺れて口が回らなかった。


『お疲れ様…もう眠りなよ』


先端が尖った紫色の結晶が小林彩の胸元に刺さった。その結晶には猛毒が込められており、かすっただけでも死んでしまうのだ。


「そん…な…」


とてつもない程の悔しさと悲しみ、そして罪悪感を抱えながら彼女は散っていった。


『はぁ…めんどくさいな』


そして瀬菜はマンションの部屋から姿を消した。



7月5日

龍平と櫻子は寝不足のまま学校へと向かっていた。

彼らが帰って来た頃には既に日が昇っており、急いで寝たものの二時間程しか眠れていないのだ。

眠い眼をこすりながら彼らは教室に入った。


「おはよう河村さん」


クラスメイトの市橋一が彼女に挨拶をしてきた。

櫻子はそれにぎこちない表情をしながら返した。


「お…おは…よう…」


彼女の仕草で何となく察してしまった。

昨日彼女に想いを伝えたのは彼だということを。

しばらくしてからチャイムが校舎に鳴り響き朝のホームルームが始まるものだと思っていた。

いつも通りに担任がやって来て挨拶をするのかと思ったが今日は違っていた。

顔に見覚えのない女の先生がやってきた、後で知ったことだが彼女は龍平のクラスの副担らしい。

その女の先生の表情は重々しかった。

その理由は…


「皆さん…おはようございます…今日は皆さんにお伝えしないといけないことがございます」


結婚でもするのかと思いきや意外な物だった。


「今日、上野さんが久し振りに登校してきてくれましたが、その…何と言うべきなのか…」


長々話せないでいると、教室の扉が開きそこには上野瀬菜が立っていた。


「先生…後は私が話します」


するとクラスの視線は彼女に集まった。

まず、久し振りに来るのでどんな風になっているのかを見ているとある部分が不自然に膨らんでいるのが分かった。

他の所は以前と変わらずスラッとしているのにその部分だけは膨らんでいた。

クラス全員にある答えが思い浮かんだ。


「皆…私さ…妊娠してるみたい…」


それを聞いたとき彼らは反応に困ってしまった。

普段みたいに大騒ぎするところではないからだからだ。

クラス中に色々な言葉が飛び交った。


「どゆことどゆこと?」


「上野ってそうゆう系の所で働いてたのか?」


「あいつマジかー」


「父親は俺らのクラスの誰かかな?」


「産むのかな?おろすのかな?」


「学校やめんのか?」


朝っぱらからやかましいが、皆の気持ちはとても分かるのだ。

こんな昔の学園系ドラマが実際に現実で起こっているのだから騒ぎ立てるのも無理はない。

櫻子の方を向くと彼女の表情は固まっていた。

すると、一人の女子が手を挙げた。


「あのさ、誰も聞かないから私が聞くね。父親は誰なの?」


それはクラス全員が思っていたことを代弁した物だった。


「それは答えられない…けど皆に関係のない人だよ」


これ以上は授業に影響が出ると考え、副担は彼女を別室に運んだ。



上野瀬菜が教室から出たあとも色々な言葉が飛び交っていた。祝福の声や汚い野次のようなものもあった。

最近の日本人は野次を飛ばすことに関しては一流らしい。

少しムカついたが、彼らがそんな意見を述べるのはしょうがないことなのだ。

結局その日の授業は頭に入らず、ただただ妊娠のことが気になってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ