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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 7話 『少女達の憎しみ』

そこに立っていた少女は自分たちと同じ年齢程の可愛らしい少女だった。

ロングヘアーの髪をゴムで纏めておりポニーテールの髪型をしていた。

その少女の顔に龍平は見覚えがあった。


「お前…どこかで…」


しかし答えは出てこなかったが櫻子が答えを出してくれた。


「貴女…もしかして高松さん?」


その名前を聞き、やっと彼はその少女の存在を思い出した。

その少女は前の高校、つまり月影雅義に襲われた高校で同じクラスだった少女だった。


「何でお前が…」


すると高松は笑った。


「何で私が黒崎くんを殺すかの答えは、君のせいで色んな人が死んじゃったでしょ?。その人達に代わって私達が君を殺しに来たんだよ」


私達と言うことは、あと数名が自分の事を殺しに来たらしい。

だが、ここで一つ疑問が出来た。

彼女は何故、あの事が自分のせいで起こったという事を知っているのかと言うことだ。


「何でお前があの事件の事を知ってるんだ?」


「私が『鬼化』した理由よりもそっちを優先するの?」


「大方は予想が出来るからな」


「ふ~ん、なるほどね。まぁ話すつもりはないからいいけど。私達が何でこんなことをしてるのかはもう一人の方に聞いたらいいよ、あの子の方が君への復讐心は強いし、多分教えてくれるよ」


もう一人の方とは狙撃手の事を指しているのだろう。

しかし、その方へ向かうことは出来なかった。


「だけど、私を倒さないと行けないから多分君が真実を知ることはないよ」


どうやら闘わないといけないらしい。

だが、龍平は直ぐに片をつけられると感じていた。

彼女の鬼の色は『緑』だったので自分が本気を出さずとも倒せると思っていた。


「さっさと来いよ…」


「じゃあ行くね…<音よ、彼の者に響け>」


次の瞬間、彼女からとてつもない程の大きな音量が龍平の耳を襲った。

その音は普通の人ならとてもじゃないが聞いていられない程の音であり、これほどの大音量なら軽く警察を呼べる程だ。


「なるほどね…お前の能力は音を操る能力かよ」


彼はその時、先ほどの現象の答えを理解した。

音は空気が振動して伝わってくるのだから、その振動を利用して衝撃波を作ったのだろう。


「正解だよ…褒めてあげる」


「櫻子…お前は大丈夫か?」


櫻子の事が気になり、彼女の方へ視線を向けると彼女は特に変わった様子はなかった。


「櫻子ちゃんには何もしてないよ。彼女は私とあの子に仲良くしてくれたからね」


どうやら高松の能力は音を聴かせる相手を選べるらしい。


「これはまずいな…」


龍平は彼らに櫻子を傷付けるつもりがないことに安心したが、彼を取り巻く状況は最悪だった。

次に彼女達がすることは予想が出来ており実際にその通りになった。

後ろから左足の太ももの所を弾丸が貫いてきた。


「やっぱりそう来るよな。お前らのコンビネーションは結構めんどくせぇな」


まず高松が大音量を発し、耳の感覚やその他の身体の感覚を麻痺させた後、もう一人の狙撃手が攻撃をする。

彼女達の闘い方はとても利にかなっており一人ではなかなか勝てそうではなかった。


「黒崎くん、辛いなら逃げてもいいのに」


大音量の中に高松は自分の声を乗せてその事を龍平に聴かせたが、生憎それは出来なかった。


「俺が逃げたら櫻子のことを攻撃するだろ?」


彼女達が櫻子に危害を加えないのは龍平が彼女達になぶられているからだ。

もし、彼が逃げたら攻撃の対象が櫻子に向いてしまう。

かと言って、この状態で櫻子と一緒に逃げることは出来ない。


「しょうがねぇ、一か八かこれに懸けてやる」


龍平は高松の方へと走り出した。

その瞬間、彼女は音の衝撃波を作り出し彼の方へと放った。

龍平は避けようとはしなかった。

手に持っていた刀でそれを斬り裂いた。


「黒崎くん、この音の中を君が突っ込める訳ないよ」


しかし、彼女の読みは外れており、龍平は既に彼女の目の前にいた。

そのまま龍平は彼女の鳩尾に拳を入れた。

鳩尾に拳を入れられ、彼女は膝を折った。


「何故…大音量の中を…」


既に彼女の能力は発動されてはいなかった。


「お前の能力はさ、やっぱ『緑』だから欠点が多いよな。まず、能力を使ってる間は動けねぇだろ?。もし動けるんだったら俺の攻撃はよけれるからな。もう一つは、お前の能力は鬼の能力を使ってる奴にしか音を聴かせられないんだろ?」


龍平はあの時、彼女が放った音の衝撃波を斬り裂いた後、直ぐに能力を解除し殴りかかったのだ。

実際に、能力を解除してからは大音量は聴こえなくなっていた。

つまり彼女達の戦法はこうだ。まず狙撃手が攻撃を始め、能力を使わないと対処出来ないことを感じさせ能力を使い始めたところで高松が大音量を響かせ、相手の感覚を狂わせた後、狙撃手が始末するという。

なかなか厄介な物だった。


「どうして…私を殺さないの?」


高松は弱々しい声でそう聞いてきた。


「お前達が俺を殺そうとするのは何となく理解出来るからな。でも、悪いけど俺は死なねぇ。もしまた来たら次はぶったぎるからな」


そう言い残し龍平は櫻子と共に狙撃手のいるビルへと向かった。

一人残された高松の目からは涙が溢れていた。


「嘘つきだなぁ…」


何に向かってそう言ったのかは分からないが彼女の表情はとても明るくなっていた。



ビルに向かっている途中…


「ねぇ龍平、私さもしかしたら狙撃手が誰なのか分かったかも知れないの」


突然、彼女からそう聞いたとき彼はとても驚いた。


「誰なんだ?」


「言う代わりにさ、私にその子と話さしてほしい…」


そのことを了承し、狙撃手かもしれない人物の名前を彼は聞いた。

ビルに着き、彼らは一階のドアからそのビルに入った。

すると、すでにその人物は一階にて彼らの到着を待っていたらしい。


「やっと来たね…龍平君、櫻子ちゃん…」


その声を聴いたときに櫻子の予想が当たっていたことが証明された。


「やっぱり貴女だったんだね…出来れば外れて欲しかったな。高松さんとは仲が良かったもんね」


櫻子の表情はとても悲しそうだった。

それでも彼女は涙は流さなかった。


「沙羅は殺したの?」


高松の下の名前だった。


「殺してないよ、ねぇ…何でこんなことをしたの?。彩ちゃん…」


櫻子の視線の中にはかつての友人、小林彩が写っていた。

その姿は以前の彼女のものとは違い両方の目からはとてつもない程の憎悪が込められていた。


「櫻子ちゃん…私がこんなことをしたのは、あの事件の原因である…黒崎龍平を殺すためよ!」


彼女からは人が出せる声量の限界を超えた声が聴こえた。


「龍平のせいってどうゆうこと?」


「あいつらは黒崎龍平を殺すために私たちの学校を襲った…私たちはお前のせいで色々な物を奪われたんだ!」


「龍平は何にも悪いことしてないでしょ!」


櫻子の方も限界を超えた声を発した。


「櫻子ちゃん…だったら話してあげる。私達があいつらに何を奪われたのかを」


そして小林はあの日のことを語り始めた。



あの日…

『黒月組』が襲ってくる5分前。

小林彩は他クラスにいる渡辺たつやの元へ向かっていた。

その時はちょうど休み時間を迎えており、10分程の自由時間だった。


「たつや!、元気にしてたかな?」


「彩…それさっきも聞いてきたよ」


たつやは少し呆れていたが顔は嬉しそうだった。

小林彩と渡辺たつやは付き合っており、今年で4年目を迎えていた。

彼らは高校を卒業したら結婚しようと誓いあっていた。


「なぁ彩…そろそろさ、いい…よな?」


彼は顔を赤くしながら聞いてきた。

小林彩はその日、渡辺たつやの家に泊まることになっていた。


「いい…よ」


彼女も顔を赤くしながら答えた。

次の瞬間、外から悲鳴が聴こえた。

彼らは急いで窓の方を見ると、そこには謎の黒い集団が上級生達を殺していた。


「見るな!」


たつやはそのまま彩の目を塞ぎ、この殺戮を見せないようにした。


「どうしよう、たつや…」


彩はとても不安がっていた。

たつやの方も不安だったが、彼女の前ではそんな素振りを見せないようにしていた。


「とりあえず、あいつらが校門付近からいなくなってから校門から逃げよう」


そして彩とたつやは校門に一番近い玄関らへんに身を寄せた。


「絶対に私がたつやを守るからね」


「彩…それは男の僕が言うべきでしょ?」


二人は少し笑っていた。

この幸せがずっと続くことを願っていた。

しかしそれは叶わなかった。

彼らの背後から四人の男達が突如襲いかかって来た。

たつやはそれに応戦しようとしたが動きが速すぎて彼では対処しきれなかった。


「たつや!」


たつやが殺されそうだった時、突然その男はナイフを懐に納めた。


「お前こいつの彼氏か?」


その男は筋肉質で傷だらけの男だった。


「はい…そうです…」


すると、その男は笑った。

とても不気味な笑みを浮かべた。


「こいつを助けてほしいか?」


「助けてほしいです…」


心の底からそう願った。


「いいぜ…助けてやるよ」


その時、彼女は心から感謝した。

しかし、次の瞬間だった。


「ただし、お前の身体で払ってもらうぜ、こいつの命代」


「どうゆうことですか?」


震えながらそう聞くと、男はこちらを押し倒した。


「こうゆうことだよ」


そして、男は彩の唇に自分の唇を重ねてきた。

さらに自分の舌をこちらに絡ませてきた。

直ぐ様、男を払いのけ距離をとろうとしたが。


「いいのかよ?。彼氏を殺すぞ!」


そう言われ、彩は逃げることは出来なかった。


「逃げようとした罰だ。股を開きな」


男は最初からそれを求めて彼らに近づいてきたことを察した。


「彩!、僕に構わず君は逃げて!」


すると男はまた笑った。


「そうだな、別に逃げてもいいぜ。彼氏を死なせたいならな」


彩には既に選択肢はなかった…


「たつや…ごめんね…私の初めてをあげれなくて」


彩は股を開いた。

泣きそうな顔をしながらも男を睨み付けた。


「お好きに…どうぞ…その代わりたつやを助けてください。お願いします」


「あぁ…いいぜ。約束しよう俺はあいつを殺さねぇよ。さぁ~てと彩ちゃんの初めては俺様が存分に味わってやるよ」


「たつや…」


そして彼女は目を閉じた。

不愉快な物が自分の聖域に入る光景を見たくはなかったから。

聖域が犯されていくのを彼女は全身で感じていた。

こんな男にあげたくなかった…



数分後


「ふぅ~、おい彼氏ちゃんと処女だったぜ。良かったなお前の女はビッチじゃなくて」


するとたつやを押さえていた三人の男は笑い始めた。

彩を犯したその男は命令が入りその場を離れた。


「爺さんも人使いが荒いな…」


最後にそう言い残した。

これで終われると思っていたが現実はそうならなかった。


「ねぇ彩ちゃん…おじさん達にも彩ちゃんを味あわせてもらうよ」


彼女はもう抵抗しなかった。

だが、抵抗しなかったせいで彼らには不服だったようだ。


「こいつ全然抵抗しねぇな、つまらねぇ」


「彼氏を殺したら抵抗するかもな」


その言葉をきっかけに彼らは彼氏の首にナイフを当てた。


「お願いします…たつや…殺さないでください」


だが、彼らは聞くつもりはなかった。


「彩!…ごめんな護れなくて」


その言葉が彼の最後の言葉だった。

その後のことはよく覚えておらず、気付いたときは衣服は所々が破けており、辺りは血の匂いともう一つ不愉快な匂いが漂っていた。


「絶対に許さない…殺してやる」


彼女の脳内は殺意によって埋め尽くされた。

それと彼を護れなかった自分の弱さが嫌だった。

彼女は立ち上がった。


「ごめんね…たつや…」


温かみのないたつやの唇に自分の唇を重ね合わせた。生きていたときの温かみと優しさはもう感じられなかった。



「これで私の話しは終わりよ」


全てを語り終えた後、彼女はとても悲しげだった。


「そんなことが…」


「私はそのあと、事件のことを調べてたらある人に出会ってそのかたがあの事件の真相を教えてくれた。あいつらが襲ってきた理由もね!」


彩は隠し持っていた拳銃を龍平に向けた。


「彩ちゃん!」


「来るな!、来たらあぶねぇから」


龍平はどうするべきかを考えた。

殺されるべきかもしれないが、今は…


「龍平君…私は君が憎い。君は護りたかった物を全て護れる力があって、全てを救えたから。そんな君だから余計に憎い!」


「違う!。俺は全てを護れてねぇよ、俺は…俺は本当に護りたかった奴を…一番大切だった奴を俺は護れてない…。だから、せめて二番目に大切な女ぐらい護ってやらねぇとな」


彩に彼は殴りかかった。

彩は拳銃を櫻子に向け、弾丸を放った。

それに気付き、彼は櫻子を咄嗟に庇った。

その時、彼は左肩を貫かれた。


「何故…何故、お前は護るんだ…」


「もう…目の前で失いたくないんだよ…」


その時、彩はかつての自分達を重ね合わせた。

自分が出来なかったことを彼は成し遂げようとしているのだ。


「もういい…今は殺さない。いずれ殺してやる」


「待て!、最後に一つ…高松は何でお前と組んでるんだ?」


「簡単よ、沙羅もたつやが好きだったのよ。私たちは幼なじみだったから」


そして彼女はその場を後にした。



ビルから出て、家に戻ることには既に日が昇っていた。


「龍平にとってさ…私は何なの?」


櫻子が家に着くとそう聞いてきた。

帰り道で彼女は一言も喋らなかったのはこれが理由らしい。


「お前は…葵の次に大切な人だよ」


これが今、自分に出せる答えだ。


「じゃあ…いつか葵を越えて見せるよ」


そう言うと、彼女は彼の頬に口付けをした。


「葵よりも、大切な人になったらさ…真ん中もらうから…」


そう言い残し、彼女は布団を占拠した。

すると、龍平は困った表情で櫻子を見つめ。


「俺…寝れねぇじゃんか」


笑いながらそう言った。

その光景をみて微笑ましく思ったのか、朝日はいつもよりも光り輝いていた。

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