第4章 プロローグ 『夢』
夢を見る。
その夢の中の大人達は彼を名前では呼ばない。
「試作番号1番。出ろ…」
彼は白い部屋に収容されていた。
その部屋には彼の年頃なら好きであろう、ゲームや漫画が置いてはいなかった。
何もない白い部屋、彼は産まれた時からずっとここにいる。
大人達は彼らに指示をする。
「試作番号1番、2番。あいつを殺せ」
そこには椅子に座られされ縄で動きを制限されている男の姿があった。
彼らにとっては当たり前のことだ。
こうして大人達に言われるがままに人を殺すことは…
今日の殺しが終わり、収容部屋に入れられると隣の部屋から声が聞こえた。
「なぁ…ここから逃げ出さないか?」
2番と呼ばれた彼はそこから逃げようとしていたのだ。
「止めようよ、ここから逃げようとしたらあいつらに殺されるよ」
1番は反対だった。
「俺は死んででも逃げてやる…ってそんな事言ったて俺にはお前の考えが分かるんだぞ、だってお前は…」
そこから急にあやふやになり彼が言おうとしていた事は最後まで聞き取れなかった。
そして、場面は変わり始めた。
その場面は彼らの収容施設が燃えている場面だった。
施設の近くには数名の大人の死体。それと自分と同い年の仲間の死体も転がっていた。
「はぁ…はぁ…後はお前だけだ」
その場面は自分ともう一人の2番と呼ばれた人物が武器を手に取り、一人の男と闘っている場面だった。
男に斬りかかろうとしたが、また場面が変わっていた。
2番の少年を1番の少年が手にかけようとしていたところだった。
その時の自分は泣いていた。
そこで夢はいつも覚めるのだ。
目を覚ますと、黒崎龍平は病室のベッドの上にいた。
雪鬼村での闘いの後、彼らは負傷を治すため基地の近くの病院へと足を運んでいたのだ。
「何で最近あの夢を見るんだろう…」
昔から龍平はあの夢を見ていた。
三ヶ月に一度ぐらいの頻度だったが、最近は二週間に一度の頻度になっている。
「ただでさえ退院した直後に嫌な事があるんだから今のうちに休ませてほしいよ…」
龍平はこの後にある嫌な事を考え、気が滅入ってしまった。
そのまま彼はまた眠ってしまった。
この夢が自身の過去を紐解く重要な物とは、眠ってしまった彼はまだ知らなかった。




