第3章 エピローグ 『目的』
中条あゆなは自分の村の約束について語ってくれた。
「妹は姉にこう言ったの、『どうか私たちの子孫の力になってあげてください。そして護ってあげてほしい。いつか姉様の力を使いにくい相応しい人がいますから』ってそんな約束だよ。聞いたときに私は少し拍子抜けしちゃった。もっと凄いものなのかなって勝手に思ってたから」
「なるほど…ってか『雪鬼』はどうなってんの?」
1番気になっているところだった。
「私は『雪鬼』と同一化、つまり鬼みたいな物になっちゃった…」
彼女の髪の色が白い理由は『雪鬼』も白いからだからなのか…
そんなくだらないことが頭を過った。
「でもさ、ちゃんと寿命が来たら死ねるからそこは安心した。私と同化するときに『雪鬼』が全部教えてくれたから」
その時のあゆなの横顔は少し寂しそうだった。
「何でそんな寂しそうにしてるんだ?」
デリカシーのないことを聞いてしまった気がするがここで聞いておかないとどこか遠くに行ってしまう気がした。
「彰兄さん殺したから私の生きる目的や意味がもうなくなったの…。可笑しいよねあんなに殺したくて堪らなかったのに、殺したら残るものは虚しさだけ…私何を目的にすればいいのかな?」
あゆなの表情には明るさが既に失われていた。
龍平は一つの案を思い付いた。
だけど、こんなお願いをしたら彼女をまた殺しあいに巻き込んでしまう。
出来ることならあゆなには平和な所で暮らしてほしい。
そんな考えが浮かんだが、彼は最終的には自分に素直になることにした。
「あゆな…することないならさ俺の復讐の手助けをしてほしい。俺は黒鬼に好きな人殺されたから俺は奴を殺したい…けど俺一人だと黒鬼には辿り着けそうにないから、俺をたすけてほしい…」
言った直後に彼は少し照れてしまった。
恥ずかしくなったので彼女の顔を直視出来なかった。
「私にメリットないのに手伝わせるの?」
「あるよ…俺が黒鬼を殺した後、することがなくなったらあゆなのやりたいこと探し手伝ってやるよ」
自分でも何を言っているのか分からなかった…
すると、あゆなは困ったように笑った。
「しょうがないから手伝ってあげるよ…龍平の復讐にさ」
彼女は今まで見せたことのない満面の笑みを浮かべた。
「よろしくあゆな…」
この日…
一人の少女の物語がまた始まった。
これは彼女の生きる目的となった…
「龍平…ありがとう」
心の中で彼女は感謝を伝えた。
そして朝を迎え、彼らは基地へと戻った。
雪鬼村の近くの山を歩いている二つの人影があった。
『やれやれ…二人揃って任務失敗だな』
『遊んでた貴方と一緒にしないでくださーい』
十師団の二人は軽やかに木々の間を走り抜けていた。
『結局、俺達の任務は何だったんだ?』
『中条彰に仕えてる毒を使う女を捕まえることですよー。捕まえられませんでしたが…』
少し残念そうな口調だった。
『まぁ、収穫もあったし黒鬼様も許してくれるだろ』
彼らはそのまま黒鬼の元へと戻っていった。
二日前…
上野瀬菜は七人衆の会議場所に来ていた。
『おい…中条はどうした?』
「そんなことは気にしなくてもいいですよ…これから死ぬ皆さんが」
手にしていたナイフを使い一人殺した。
「残り四人かな」
数分後…
中条彰を除く五人の七人衆を彼女は死体にしていた。
「こんなんで国を護れるわけないじゃん。
はぁ…めんどくさいけど『あの本』を探すか」
そのまま彼女は部屋にある本棚の中から一冊の本を探し当てた。
「見つけた…これを手にするために近づいたんだしもういいや」
目当ての物を見つけ、彼女は笑った。
「中条様…私の薬を飲んで死んでくれたらいいのになぁ~。あの人の好意を利用するなんて私も悪女になっちゃったんだね…」
彼女は部屋の出口へと歩き出した。
「最後に笑うのは私よ…」
そのまま彼女は夜の街へと消えていった。




