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復讐鬼  作者: 中村淳
第3章 『黒鬼討伐隊選抜試験』
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第3章 25話 『強大な壁』

中条彰との闘いを終え、黒崎龍平達は休憩をしていた。


「あのさ、そろそろ助けてくれないかな?」


三人で休んでいると、中条彰の能力によって身動きがとれなくなっていた雪村進一が助けを求めた。


「忘れてた」


三人同時にそう言い、彼は少しがっかりした。

中条あゆなの能力によって彼の体の周りの氷は砕かれた。

結局彼女の髪の色や肌の色は変わらず白いままだった。


「そろそろ、帰るか」


黒崎龍平が帰るきっかけとなりあゆなは氷の壁を壊そうとした時、彼女は自身の能力で形成した壁の一部分が壊れていることに気づいた。


「龍平!、みんな!。警戒して…何者かが侵入してる!」


中条あゆなの言葉を聞き、彼らは最大限の警戒をした。

そして、その人物は現れた。


『そんなに警戒しなくても奇襲なんてセコい真似はしないよ』


黒い法衣を身に纏い、頭部には黒い鬼のお面を着けていた。


「黒鬼十師団か…」


服装からして、黒鬼の手下なのはほぼ間違いなかった。


『正解だよ…俺は十師団の最強…つまり一番を勤めさせてもらってるんだ』


その言葉に彼らは皆、驚きと恐怖の表情を浮かべた。

黒崎龍平と水本早苗はかつて二番の人物を目の当たりにしたことがあるが、今襲いかかってくる恐怖はかつての物とは比べ物にはならない。


「何が目的だ?」


臆することなく黒崎龍平は目的を問い質した。


『別にお前らに用はなかった。中条彰に用があったんだがな…お前らが殺したようだな』


その瞬間、一番の人物は強い強い殺意を周りに解き放った。

その殺意に当てられた時、彼らは明確な死のイメージを感じた。

一人は首から上を斬られるイメージ。

一人は内臓を抉られるイメージ。

一人は酸素を取り込めなくなるイメージ。

一人は心臓を突き刺されるイメージ。

体感時間はものの数分だったが、彼らには永久に感じた。


『驚いたな…このイメージを見せられて壊れないとはな』


「そうかよ…」


彼らは闘うことを諦め、逃げようとした。


『逃げるなよ…することなくて暇だからな。黒崎龍平…俺と闘え。俺を満足させられたら見逃してやるよ』


「いいぜ…お前を殺してやるよ…

<我が鬼よ、我が身に宿れ>」


久しぶりに能力を使い、黒崎龍平の気分は良くなっていった。

龍平は両足に力を込め、飛び出した。

たった一歩で数メートル離れていた距離が一気に縮まったのだ。

刀を振りかざし切り裂こうとしたがそれは叶わなかった。


『この程度かよ…』


振りかざされた刀を片手で受け止め、そのまま自分の身体に引き寄せがら空きになった左ほほに蹴りをぶちこんだ。

ぶちこまれた衝撃で彼の首は千切れそうになった。

黒崎龍平はそのまま氷の壁に激突した。

その時の衝撃により氷の壁は粉々になり崩壊した。


「嘘でしょ…」


水本早苗の言葉は他の二人の言葉を代弁した物でもあった。

彼らは恐らく黒崎龍平はもう死んでしまっているのではないかと思い始めた。

あの衝撃で生き残れる人間などいないのだから。


『つまらないな…この程度の奴に黒鬼様は何を期待しているのかが分からないな。これなら赤城隼人の方がましだな…』


すると、黒崎龍平が吹き飛んだ先からとても大きな波動を感じ始めた。


「うるせぇよ…」


黒崎龍平の身体には傷がなく、まるで何事もなかったかのようになっていた。


『なるほど…死にかけると本来の力が使えるのか…つまり俺の能力を使えばお前は本気になれるのか…』


黒崎龍平は先ほどよりも更に強い力を両足に込め、飛び出した。


『見えないな…』


そう呟いている隙に、龍平は彼の懐に潜り込み刀を振るった。

振るった時の衝撃は凄まじかった。

黒崎龍平達は自分達の勝利を確信したが、この時初めて知ることになる。

十師団の恐ろしさを…


『なかなかいい一撃だな…』


一番のダメージと呼べるものは、衣服が多少破けていることだけだった。


『本当は使いたくなかったが、もう少し楽しませてもらうぞ黒崎龍平…』


一番は黒崎龍平の頭部を素手で掴み、こう言った。


『<死ね>』


そして龍平の心臓の鼓動は止まった。


『さぁ…見せてくれ…』


もしも彼が普通の人間なら死ぬのは避けられない運命だ。

普通の人間なら…



黒崎龍平が目を覚ましたのは真っ白な世界ではなく、一面が暗く。まるで暗黒のような世界で目を覚ました。

目を開いても何も見えなかったが耳だけは聞こえた。

その声はかつて聞いたことのある声だった。


『久しぶりだな龍平…』


鬼の声だった。


「久しぶりだな、これは一体何なんだ?」


『単刀直入に言うとお前は死にかけてるんだよ。一番を名乗る奴の能力のせいでな。だが、死にかけてる時点で既に可笑しいがな…』


「どうゆうことだ?」


『お前の受けた能力は普通の奴なら確実にくたばっちまうんだよ…まぁお前は特殊だからな』


「そんなことはどうでもいい…どうすればいい?」


『昔の自分に委ねろ…そしてある感情を寄越せ。そしたらお前には神をも殺す力をやる』


また、世界は変わった。


今度は透明な世界だった…

そこには以前会った別の自分がいた。


『君は弱いね…』


「どうしたらいい?」


『そんなことを聞く時点で弱いよ。そんなことをするなら君は僕に身を委ねろ…』


「それは嫌だ…」


『我が儘で醜いな。まぁいいけど、三分であいつを殺すことが出来れば君は君のままでいれるよ』


「三分が過ぎればどうなる?」


『君は君のままでいられなくなるよ。

まぁそんなに遠くないうちに君は君を捨てることになるけど…

夜叉との特訓をしてるなら分かるよね?

何を喰わせれば強くなれるか…』


「殺意だろ…」


透明な世界から、彼は何かに引っ張られるかのようにその世界を後にした。



『死んだか…つまらないな』


一番を名乗る人物は黒崎龍平が死んだのを確認するため彼の体に近づき始めた。

すると、異変が起こった。


「勝手に…殺すな…」


黒崎龍平はおもむろに立ち上がった。


『やはりお前は面白いな』


「時間がねぇからさっさと終わらしてやる。

<我が鬼よ、殺意を喰らえ>」


その言葉を言い放った後、彼の身体から発せられる鬼の色の濃さはかなり濃くなり始めた。

以前は片眼だけだった眼の変色が今回は両目となっていた。


『来いよ…お前とはもう少し楽しめそうだからな』


その言葉を言われる前に彼は既に行動していた。

目にも止まらぬ速さで敵のもとへと駆け抜け、その勢いを利用し刀を抜刀した。

流石の敵も自分の刀を抜き応戦した。


『さっきので学習しろよ…俺に接近戦したら死ぬってことをよ!』


今度は腕を触れられた。


『<死…』


「さっきと同じ手は喰らわねぇよ」


敵が言い終わるよりも先に刀の鞘を敵の顎へと直撃させた。

間一髪、かわされたが鞘がお面の一部に接触しヒビが入った。


「てめぇのツラ見せて貰うぞ!」


お面を砕こうとしたが。


『ここまでか…結構楽しかったぜ。黒崎龍平…』


敵は龍平が握っていた刀を叩き落とし、怯んだ隙に鳩尾に拳を入れた。


『不完全な力でここまで使えるのは凄いな…流石だな『神殺し』…』


黒崎龍平は全身に力が入らなくなった。


『楽しませてくれた礼だ…殺さないでやるよ。

その力が扱えるようになったら本気で殺してやるよ…』


その言葉を残し、一番はこの場から消え去った。

一番の言葉を聞く前に彼は力尽きて倒れてしまった。


『残念だったね…』


どこから聞こえたその声に黒崎龍平は応じることはなかった。



黒崎龍平が目を覚ましたのはそれから二時間程経ってからだった。


「ここは…どこだ?」


辺りを見渡すと崩壊した建物が幾つかあったので自分の現在地が先ほどと変わっていないことが判明した。


「やっと起きた…」


その声の主は中条あゆなだった。

既に日は暮れていた。


「悪い…どのくらい倒れてた?」


「二時間ぐらいだよ…その間、雪村君と早苗ちゃんがヘリコプターまで行って清水博士に状況を説明してた」


ヘリコプターまで行く途中に赤城隼人が血塗れになった状態で倒れているのを発見し直ぐ様病院へと搬送した。

そのことを聞いたとき、龍平は驚愕した。


「赤城さんがやられたのか…」


「そう…赤城さんを病院に連れていくためにヘリコプターは使われてるから次に来るのは明日の朝頃なの」


つまり自分達は朝まで過ごさなければならないらしい。


「このことが終わったら二人に礼をしないとな」


「そうだね…」


「そう言えば雪村と水本はどこだ?」


「あっちで寝てるよ」


あゆなが指を指した方で彼らは熟睡していた。

話すこともなくなったので彼は一つ気になっていたことを聞いた。


「あゆな…この村の昔話で出てくる約束って何なんだ?」


その事を聞かれると彼女は少し困った顔をしたが直ぐに普段の顔に戻り、彼女は話してくれた。

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