第1章 5話 『遭遇』
気がつくとそこは、さっきまでいた路地裏ではなく、見渡す限り真っ白な世界だった。
白以外の色はなくただただ白い。
俺は死んだのか…そう思っていると、その世界は少しずつ黒く染まっていった。
完全に黒くなるとそこには見えるはずのない大きな扉があった。
禍々しく、とても大きい扉だった。
その扉には鍵穴が付いていた。すると自分の手に鍵があることに気づいた。
この鍵で扉を開け、直感的にそう思った。
だが、その扉に手を回す勇気が出てこない。
この扉は自分の中の『何か』に繋がっていると感じたからだ。その『何か』が恐ろしいものであることも…
『おい…、扉を開けろ』
その声はとても暗く、重みのある声だった。
『人間…、力が欲しくないのか?、俺様ならお前に力をくれてやる。『鬼』の力をな…』
すると扉から黒い靄出てきた。
その靄に触れると、力が沸いてきた。
『これで…、少しは信じるか?』
「お前が本当に『鬼』なら、俺にあいつを殺す力をくれるのか?」
俺が今、最も欲しているものを『鬼』に聞いた。
『くれてやるよ…、俺様がお前に力をやるよ』
もし、今ここで扉を開けたら自分はどうなってしまうのか?
そんなことが頭をよぎった。
でも…、今はどうでもいい!、俺に力をくれるのであれば、鬼でも、悪魔でも構わない!
そして俺は手に持っている鍵を鍵穴に刺した。
「俺に力を寄越せ…、俺に復讐をさせろ!」
そのまま扉を開いた。
扉を開くと、黒い靄が大量に飛び出してきた。
それは瞬く間に1つの個体のような物となり、形になった。
その形は人型みたいな物だった。だが、顔は不鮮明であるのかさえ分からない。
唯一分かるのは顔と思われる場所の頭上に角のような物があることだけだ。
『ようやく…、出てこられた。何年ぶりだ…俺様が人間に力を貸すのは…、まぁどうでもいい…、
人間…貴様の名前は?』
「黒崎…龍平」
『龍平か…、あいつと同じ名前だな…』
少しだけ口元が緩んだ気がした。
『龍平…、お前には感謝をしよう、俺様を封印から解放してくれてありがとよ…、さて俺様について話そうか…、俺様は『鬼』とそう呼ばれる連中の一人だ。俺様のところまで来た人間はお前で二人目だ。俺様レベルだと…、並大抵の『憎悪』と
『悲しみ』じゃ無理だけどよ、お前の『憎悪』は今まで見てきたなかじゃとんでもない程大きい』
「そんな事はどうでもいい!、お前の力を使う条件を言え…」
『鬼』は少し驚きをみせたが、すぐに話しだした。
『俺様の力を使う条件は…、負の感情だ…、俺たちは人間の負の感情が好物でな、中でも『憎悪』と『悲しみ』、そして『絶望』この三つが大好きなんだ。俺様の力を使いたいなら俺様にこの三つのどれかを喰わせろ…、そしたらそれに応じた力をくれてやる』
「分かった…、そんなものならくれてやるよ…、俺は奴を殺す…」
俺の体から黒い靄が出てきた。
その靄は『鬼』の方へ向かった。
『素晴らしい『憎悪』だな…、力をくれてやるよ、とはいえ俺様もお前も少し特殊だからな…』
最後に気になる言葉を残し、『鬼』は黒い靄となり俺の体に入り込んだ。
『さぁ…、お前の力を見せてみろ…、そしていつの日か…、この世界をぶっ壊してみろ…』
そして奴を殺すための物語が始まった…




