第3章 23話 『各地の闘い』
『雪鬼』の儀式が始まった頃…
雪鬼村の近くの山で彼らは死闘を繰り広げていた。
「いやぁ~凄いですねぇ~。まさかぁ~貴方がこんなに強くなるなんて」
丸眼鏡をつけたボサボサの髪の少女は感心していた。
『俺のことを知ってるの?』
黒い鬼のお面をつけた人物は彼女にそう聞いた。
「貴方のことはとっくに知ってますよぉ~」
すると、黒い鬼のお面は突然粉々に砕けた。
お面をつけていた人物は直ぐ様、布で顔を隠した。
「やっぱり…君でしたか。元気にしてましたかぁ~」
その人物は渋々答えた。
「元気だよ。遥も変わらないね…どうして遥がそっち側にいるの?。遥も黒鬼様の計画については俺より詳しいだろ?。それに…」
続く言葉を遮って清水遥は答えた。
「貴方が言いたいことは分かりますよぉ~。私も貴方もあの『施設』の出身者ですからね。確かにあいつらの事は止めないといけませんけどぉ~。私には私なりの考えがあるので、黒鬼はそれを邪魔しようとしているので私はこちらがわにつきました。それに…その方がおもしろいじゃないですかぁ~」
眼を見開き、彼女は狂ったように笑い始めた。
その人物は説得を諦めた。
「もういい…俺は任務を遂行する。邪魔をするな」
その瞬間、雪が降り始めた。
その事を見ると清水遥は笑みを浮かべた。
「構いませんよぉ~。私の計画も進みますからねぇ~、それにあなた方の任務の内容も何となくは分かりますからねぇ~」
その言葉を聞くと、その人物は黒い鬼のお面をつけ姿を眩ました。
誰もいなくなったその場所で彼女は…
「私の計画のために利用させてもらいますよ…黒鬼さん」
その言葉は誰も知ることはなかった。
神社の階段付近で天原凉音は二十人の男と闘っていた。
「もう面倒ね…武器を使わせてもらう。
<糸よ、針に結びつけ>」
天原凉音は小さな箱に収納している十本の針を出し、自身の能力である糸に結びつけた。
その針は裁縫などで、使われるような針だった。
その針にある穴に糸を通して、結びつけた。
「さてと…終わらせてあげる。
<縫い合わせろ…>」
十本の針は、色々な方向へと向かった。
そして幾つかの男たちの胸にささり、その肉体を貫いた。そのまま男の体に穴を開け絶命させた。
それらの光景が幾つか生まれた。
最後は、全員の体に穴を開けそれらの死体を一つにするために縫い合わせた。
「気持ち悪いよ。この肉の塊が!」
そう吐き捨て、彼女は黒崎龍平達の所へ向かおうとしたが、それは叶わなかった。
向かおうとした瞬間、背後から強大な殺意を感じたのだ。
直ぐ様振り向くと、その人物は歩きながらこちらに向かっていた。
『やれやれ、また女か…。そこを退いてくれるなら殺しはしない』
その人物は天原凉音にそう言ったが、彼女は聞こうとはしなかった。
「嫌よ!、貴方何者?」
冷静な彼女は情報を集めることにした。
もしこの人物が黒鬼なら自分は今ここで彼を食い止めなければならないのだ。
『俺は、黒鬼十師団で一番をやらせてもらってるんだ。早くそこを退け…』
それでも彼女は退こうとはしなかった。
「後輩のために闘う」
針を構え、そのまま突き刺そうとした。
『バカが…死ね』
圧倒的な早さで糸と針を木っ端微塵にされた。
そのままその人物は天原凉音の頭部に腕を伸ばし掴んだ。
『<死ね>』
そして、天原凉音は死んだ。
彼女自身も何をされて死んだのかは皆目検討がつかなかった。
『行くか…』
その人物は神社に続く階段を上り始めた。
その同時刻…
赤城隼人はうららと名乗る人物と剣を交えていた。
そこら中から刀と刀がぶつかる音が鳴り響いていた。
「いい加減…斬られてよ。うららぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
いつにも増して彼は穏やかではなかった。
今の彼の目には憎悪しか浮かんではいなかった。
『やっぱり隼人兄さんは強いねー』
負けじとうららも応戦していた。
赤城隼人は自身の能力を最大限まで高めた状態で使用しており、普通なら相手の刀など既に切断していても可笑しくないのだ。
「はぁ…はぁ…。何で斬れないんだ…」
すると、うららはその理由を答えた。
『隼人兄さんは私の能力を何となくは分かってるよね。私の能力は斬撃を放つ能力だから、私の斬撃に触れちゃうと大抵の物は切断出来る。兄さんの能力も刀の切れ味を高める能力だから大抵の物は斬れるでしょ?。私の刀が斬れないのは私が斬撃を刀に纏わせてるから、お蔭で私の刀の切れ味はとんでもないよ!でもさ、やっぱり貴方の刀だけは切断できない…やっぱり私たちが兄妹だからかな?隼人兄さーん!』
すると、彼女は刀を振り三つの斬撃を飛ばした。
赤城隼人は色々な方向から来る斬撃を全て刀で防いだ。
しかし、彼はその直後自分の右腕に痛みを感じた。痛みを感じた所に眼を向けるとそこには何かで斬られたような跡が残っていた。
「なるほど…うららは不可視の斬撃も放つことができるのか…。ますます殺しにくいよ」
赤城隼人はその言葉をいい終えると、うららの元へと走り始めた。うららはまた刀を振り、四つの斬撃を放った。
先ほどと同様に彼はそれらを全て刀で防いだ。
不可視の斬撃は赤城隼人の正面と背後にそれぞれ一つずつ迫っていた。
赤城隼人は、正面の斬撃を刀で受け止めそこから身体を捻り、その勢いのまま背後の斬撃を叩き落とした。
そのまま彼は、うららの首を斬ろうとしたがギリギリの所で彼女はそれをかわした。
しかし、その時彼女のお面に切れ込みが入りお面を砕け彼女の素顔が明らかになった。
うららの顔は赤城隼人と同様に穏やかな顔つきでとても整っていた。髪型はセミロングをしており肩の少ししたまで髪を伸ばしていた。
赤城隼人と違うところは髪の色が彼とは対照的な深い深い青色だということだけだった。
「やっと妹の顔を見ることが出来たようらら…それともこう呼ぶべきかい?。水無うらら」
水無うららと呼ばれた少女は返事をした。
「はーい、久しぶりですね!隼人兄さん」
「君には兄さんとは呼ばれたくない…家族を殺した君にはね」
「そーですよねー。まぁいいですけどー」
相変わらずふざけた口調で返事をしてきたので彼は少し苛立った。
「そろそろ殺すよ…」
そう言うとうららは笑った。
「無理ですよ…」
すると、赤城隼人は右肩から左下の腰の所に何かで斬られたような跡が出現し。それと同時に彼は倒れこんだ。
「なるほど…前もって撃ってたのか」
「そうですよー。兄のよしみで今は殺しませんけど、これ以上、黒鬼様の計画の邪魔をするなら殺しますからね。あの日と同様にね」
水無うららはそのまま姿を眩ました。
赤城隼人は急激に血を失い、意識を失った。




