第3章 17話 『雪鬼村』
春夏秋冬いつでも雪が積もっている異常地帯…
昔とある科学者がその村を調べたとき彼はそう答えたらしい。
その村の名前は『雪鬼村』と呼ばれていた村だ。
降り積もった雪を踏みながら歩いている二つの黒い人影があった。
『疲れましたよーいい加減休みましょうよ』
黒い法衣を着衣し、黒い鬼のお面をつけた二つの人影の片方は少し不服そうに話し出した。
『そう言わないでよ…俺もめんどくさいの我慢してるんだから』
もう片方の人影もまた不服そうにしていた。
それもその筈、彼らはここまで約三日間歩き続けていたからだ。
『しょうがないですよーだってこの前の総会に貴方は出席してませんからね。何でサボったんですか?』
『眠たかったから寝てた』
その人物の答えにもう一人は少し苛立ちを感じていたが口にはしなかった。
『まぁいいですけど…仕事してくれればねー』
『頑張るよ。名誉挽回させてもらおう』
そのまま彼らは森を抜け、広い広い広大な雪の世界に足を踏み入れた。
その世界はとても美しく、この時期では決して見ることの出来ない光景。
しかし、彼らはその光景を長くは味わえなかった。
突然、彼らの回りに白い狐のお面をつけた集団が現れ彼らを囲い始めたのだ。
「貴様ら一体何者だ?」
白い狐のお面の集団のリーダーらしき男が不信人物の身元を問い質した。
『やれやれ…これだから黒鬼様の命令はめんどくさいんだよ』
『私は黒鬼十師団の三番をやってるうららちゃんでーす!』
片方はこの状況に溜め息をつき、もう片方は明るく自身の自己紹介を始めた。
「お前達…今すぐ殺せ!」
狐のお面のリーダーらしき男は部下に彼らを殺すように指示した。
白い狐のお面をつけた集団の数はおよそ二百人ほどだった。
普通なら大人しく死んでいただろう。
普通なら…
『ここはーめんどくさいのでー貴方に任せますよ。一番さん…』
その呼び掛けに答えることなく一番と呼ばれた人物は集団の方へと向かっていった。
数分後…
『さてと…行くようらら』
二百人全員を返り血を浴びることなく一番と呼ばれた人物は殺した。
『はーい。早く任務を終わらせましょう!』
そして彼らは雪鬼村へ歩き始めた。
黒崎龍平が目を覚ましたのは地下牢と呼ぶのにふさわしい場所だった。
まず彼が目覚めて最初に感じたものは猛烈な寒さと喉の渇き、そして腹部の痛みと手と足に嵌められた枷のような物の感触だ。
「ここはどこだ…」
自分が連れ去られた場所を確認しようとすると、
その男は現れた。筋肉質の身体に整った顔立ちをしている男、中条彰だ。
「ここは『雪鬼村』だ黒崎龍平…」
その顔を見たとき、彼は真っ先に殺意を抱いたがどうゆうわけか鬼の力が使えなくなっていた。
「てめぇ…」
今すぐにでも殺してやりたくても、現状について何も理解出来ていないので無理だった。
「そう睨むなよ…とりあえず説明しとくは。ここは雪鬼村って言う俺とあゆの生まれ故郷だ。まぁ俺が滅ぼした村だけどな。お前には後で『儀式』に参加してもらうぜ。因みに試験の日から3日経ってる、それとお前の能力が使えないのは鬼鉱石で出来た枷をつけられてるからだ。どうゆう訳か分からねぇけど鬼鉱石で出来た枷をつけられると能力を封じられるらしい」
つまりは鬼の力は使えず、脱走も厳しいらしい。
更に彼は絶望を突きつけてきた。
「最後に一つ言っておく、この村の周りには俺の仲間が約八百人いる…助けは期待するな。黒崎龍平、後でこの村の昔話を教えてやるよ…」
そう言って彼は何処かへと向かっていった。
その直後、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
足音が聞こえた方を向くとそこには中条あゆなが立っていた。
「あゆな…」
「龍平…ごめんね。あんなことして…でも私の目的のためなの…」
試験の日、彼女はこちらに何かを耳打ちしていたが最初らへんが聞き取り難かったのだ。
だけど恐らく…
自分の中に生まれた答えを殺し、彼は彼女に話題を振った。
「なぁあゆな…この村の昔話って何なんだ?」
すると彼女は黙ってしまった。
彼女が黙った理由を考えているとその男は戻ってきた。
「ただいま…黒崎龍平。俺の妹をたぶらかすなよ」
「済まなかったな…それで?昔話は?」
「先にあゆが答えなかった理由を教えてやるよ。本来、この村の昔話はこの村の人間以外に教えたら駄目なんだよ。まぁ今となってはどうでもいいがな、黒崎龍平…この村と『雪鬼』について教えてやるよ」
そして彼は語り始めた。
『雪鬼村』の約束の物語を…




