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復讐鬼  作者: 中村淳
第3章 『黒鬼討伐隊選抜試験』
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第3章 7話 『毒』

谷原新田は突然、吐血しだした。


「おい…どうした?」


自分が殴ったためにこのようなことが起こったのか思案していると、谷原は眼からも血を流し始めた。


「な…これは一体なんなんだ…」


当事者である谷原にも原因は不明らしい。

更に、手の甲からも出血しだした。


「黒崎!、コイツら何か可笑しい!」


水本の叫びを聞き、振り返ると先ほど闘っていた五十名程の人が全てが谷原新田と同じ現象を起こしていた。


「どうゆうことだ…」


原因が分からず困惑していると。


『あ~あ、やっぱりこうなるか…投入した量が多かったかな』


声が聞こえる方に振り向くと、そこには白い狐のお面をつけた人物が立っていた。

服装は彼らと同じ黒い法衣を着ていた。

声は変声機のような物を使っていてよくは分からないが恐らくは女だ。


「お前がこれの原因か?」


谷原の方を指差すと、


『そうだよ…私がやった…でも感謝してほしいよ青鬼の彼らを強くしてあげたんだから』


「そうかよ…」


既に谷原に息はなくなっており、死んでいた。

さっきまで殺そうとしていた奴が死んでしまうというのは複雑なものだと感傷に浸っていると。


『にしても、コイツら馬鹿だよね。簡単に能力が強くなるわけないのに…』


「お前…もしかして自分の能力の実験にコイツらの命を使ったのか?」


『そうだよ…私の能力は身体機能ぐらいしか強化出来ないけど。もし…私の仮説通りなら能力も強く出来るのかなって思ったけど実験は失敗だった。強化出来たのは身体機能だけ、稀に能力も強く出来たけど…量が多過ぎて身体が耐えきれずに死んでしまった』


「ふざけるな…人の命で実験してんじゃねぇよ!」


怒りを抑えきれず黒崎龍平は声を荒げた。


『よく言うね…私の実験動物を簡単に殺したくせにね』


「それとこれとは違うだろ!」


『一緒だよ…君も私も人殺しだよ…』


正論だった。どんな言葉を並べても結局自分は人殺しなのだ。


『さてと…ムカついたから君も殺してあげようかな。

<我が鬼よ、彼の者の身体を蝕め>』


彼女は腰に着けていたナイフを取り襲いかかってきた。

彼女のナイフからは禍々しい程の鬼の波動が込められていた。どれほどの憎悪が込められているのか想像出来ない。


「殺られてたまるかよ…」


直ぐ様、持っていた刀で応戦しようとしたが、彼女の動きが自分の眼で追える限界を超えていたのだ。


『遅いね…』


その言葉が彼の耳に入った時、彼は既にナイフを刺されていた。

背中にとても深く刺されてしまった。

その時、鬼の波動が彼の身体の内部に入り込むのを感じ取った。


「まさか…お前の能力は…」


続きを言おうとしたが、舌が回らなくなっていた、身体中が痺れてきた。所々から出血をしていた。気分も悪くなり視界もボヤけてきた。


『私の能力は簡単に言うなら毒だよ。私の鬼は毒を操る鬼、この能力はかなり使い勝手がいいからさ身体機能を強くしたり、回復力を高めたり、毒は使い方1つでどんなことでも出来る…と言っても知識がないと使えないから最初は苦労したよ。

それにさ…私の鬼の毒は現代の医学だと解明しきれないものがたくさんある。つまりは鬼特有の毒。君はもう助からないよ』


最悪だ…

まさか毒とは…流石の回復力でも毒相手となるとどうすることも出来ない。


「はぁ…はぁ…死んでたまるかよ」


呼吸が酷い、身体に力が入らない。血が止まらない。


『へぇ~この毒を受けて立てたのは君が初めてだよ』


「そうかよ…」


残された力を振り絞り、せめて一矢報いたい。

脚に力を込め跳躍した。


『そんなの当たらないよ…』


彼女は軽やに避けた。


『念のために更に射っとこうかな』


手に持っていたナイフを今度は足の太ももに刺した。


「嘘だろ…」


そのまま黒崎龍平は倒れた。

『さてと…私の鬼の毒を受けて生きてたのはいないけど君からは何かを感じるからとどめをさしておこうかな』


彼女はナイフを振りかざし、黒崎龍平の命を絶とうとした。


「させない…」


間一髪、それを刀で防ぎ押し返した。

そこには水本早苗が立っていた。


「こいつは殺させない…」


『はぁ…めんどくさいな…まさか貴方まで来るとは』


しかし、彼女の動きは止まることなく水本早苗の方に向かっていった。

水本がそれに気付いたときには既に自身の顔にナイフが刺さる寸前だった。

自分の死を覚悟したその時だった。

突然ナイフが粉々になったのだ。


「これ以上は好き勝手させないよ」


「後輩達は殺させない」


『吉野裕介と赤城隼人か…本当にめんどくさいな…』


水本の前に、吉野裕介と赤城隼人が並んでいた。



「さてと吉野、龍平君の体内に残ってる毒を熱してほしい」


「悪いけどそれは無理…あいつの毒はあいつしか解毒出来ないらしいからな。そうだろう七人衆さん」


その言葉に黒崎龍平は驚いた。

まさかもう自分を殺しにくるとはな。


『バレてたか…』


「その白い狐のお面は七人衆の象徴でしょ」


そこに赤城隼人が口を挟んだ。


「お嬢さん、流石に僕らと1人で闘うのは無理があるでしょ?そこで提案なんだけどさ、龍平君の毒を解毒してほしいんだ。これは僕ら双方にメリットがあると思うよ。君だって龍平君に死なれたらもしもの時に困るだろ?」


『そうね…でも計画は失敗しない。だから助けなくてもいい』


「中条はそう思ってないらしいよ」


すると彼女の背後に中条彰が立っていた。


『中条様…黒崎龍平をどうなされたいですか?』


「今すぐ黒崎龍平の毒を解毒して、彼には死なれたら困る」


『分かりました…

<毒よ、彼の者の身体から消え去れ>』


黒崎龍平の体内から鬼の波動が消えていった。

そして彼の身体は回復を始めた。


「これで黒崎龍平は助けた…そろそろ退くぞ」


中条彰は撤退をしようとしたが。


「少しは遊ぼうよ」


次の瞬間、吉野裕介から火の鳥が放たれた。


「<凍りつけ>」


直ぐ様、凍らせ粉々にした。


「また会おう」


彼らは破壊された所から建物を飛び出し姿を消した。



とある高層マンションの屋上。

中条彰と狐のお面をつけた人物はそこに立っていた。


「しっかし君も随分無茶するね」


『申し訳ありません』


「そろそろお面取りなよ瀬菜」


お面を取り外し素顔を露にした。


「やっぱり可愛いね」


「気持ち悪いですよ中条様…」


軽蔑の目を向けながらそう言った。


「酷いな、俺がいなかったら赤城隼人と吉野裕介に殺されてたのに」


「私は死にませんよ」


「そうだね…死んだら彼との子が死んでしまうからね」


中条は彼女のお腹を指した。


「知っていたんですか」


「薄々はね、安心していいよ。他の奴には言ってないから。そのお腹の子は彼との子だよね?」


「それ以外に誰がいるんですか?」


「瀬菜ってさ尻軽に見えるからさてっきりやらかしたのかなって」


「殺しますよ」


ナイフを手に持ち、中条の首もとに向けた。


「ごめんなさい…さてと黒崎龍平はどうだった…俺たちの計画に役立つかい?」


中条は先ほどまでの軽さを消し上野瀬菜に問いかけた。


「今のままでは役に立つとは思いません」


「そうか…まぁいいとにかく『雪鬼』を早く手にいれないとな」


「そうですね…」


「瀬菜の為にもね…」


そして彼らはその場を後にした。

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