第3章 5話 『変色』
その日の夜…
黒月組の残党のリーダー谷原は総勢五十人いる仲間を潰れた工場に集めていた。
「注目!私が黒月組を率い初めてまだほんの少ししか経っていないが、お前たちに話がある!」
リーダーとしての貫禄を見せつけながら彼はそう話し始めた。
谷原新田、志村同様に始末屋として月影雅義に貢献していた人物だ。彼は黒鬼信者ではなく月影雅義に忠誠を尽くしていた。あの日の闘いに彼は参加することが出来なかった。別件で月影雅義の元を離れていたのだ。そして月影雅義が死んだことを知った彼はひどく怒りを抱いた。
「私たちの前のリーダー月影雅義様を殺した黒崎龍平…近々奴は私を殺しにくる…皆の者!黒崎龍平を血祭りにあげるぞ!月影雅義様の無念は私たちが晴らすぞ」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!」
雄叫びが収まったころ谷原はある人物を呼んでいた。
「この御方は私の鬼の能力を強化してくれた素晴らしい協力者だ。今回のことを話したら皆の分も強化してくれるらしい」
そのまま話しはその人物に話が引き継がれた。
『今晩は…今回の件で協力させていただく者です。顔と名前は訳あって公開することは出来ませんが御許しください。それでは皆様にお力を与えます。
<彼の者たちに力を与えよ>』
そして集まりは幕を閉じた。
次の日の夜…
黒崎龍平と水本早苗は潰れた工場に着いていた。
「ここか…」
その工場からは重々しい空気が漂ってきていた。まるで何かを拒むかのような。
「さっさと終わらせましょうよ」
そう言いながら水本早苗は腰にある刀に手を回した。
「落ち着けよ…赤城さんからは場所以外何も知らされてねぇんだからよ。敵の規模も能力も分からねぇのに突っ込んだら死ぬだけだ」
黒崎龍平は逸る気持ちを抑えながら落ち着いていた。
「貴方の能力で敵の規模を調べてよ」
「今やってる…なるほど…敵の数は大体五十人ぐらいだな」
そのことを言うと珍しく表情を変えた。
「五十人!ちょっとどうするのよ!」
それはこっちが言いたい。流石に五十人は無理がある。
「しかも…何か変な鬼の色してるんだよな…」
一番気になっていることを口にすると。
「どうゆうこと?」
意味が分からず水本早苗は聞いてきた。
「五十人全体を見ると、鬼の色は大体青色に見えるんだけどよ…どうゆうわけかそれに赤色が混じってるみたいな色なんだよ」
つまりは、青に赤が混ぜられ紫のような色に変色しかけているのだ。
「それってさ…ヤバイの?」
事の重大さを理解していないらしい。
「はぁ…つまりさ鬼の能力を強化する奴が関わってるってことだよ。そいつの色は赤だな」
資格を得るための試験がここまで難しいのは勘弁してほしい。
「でも…行くしかないよね?」
当たり前の事を聞いてきた。
「そうだな…さてと考えてても仕方ないから行くぞ」
この二人で考えていても仕方ないので突撃することにした。
工場の入口付近に立ち、
「<我が鬼よ、我が身に宿れ>」
「<我が鬼よ、我が神経に大いなる力を与えよ>」
黒崎龍平は工場の扉を蹴破った。
「さてと行くか…さっさと殺して帰るぞ」
黒崎龍平はそのまま走り出した。
「はぁ…男って本当に野蛮ね…」
水本早苗はため息をつきながら黒崎龍平の後に続いた。




