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復讐鬼  作者: 中村淳
第3章 『黒鬼討伐隊選抜試験』
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第3章 プロローグ 『雪の中の決意』

今でもその日のことは思い出す。

私が12歳の時の記憶、私が育った村の平和な日常が崩れさっていった日のことだ。

私の育ったところは年中気温が低く、夏でも少し寒いくらいだった。

そして、事件は起こった。

その日は数年に一度の大寒波で村中を吹雪が覆った。

私は、家族と一緒に暖をとっているとそれは突然起こった。

突然、激しい爆発音が村中に鳴り響いた。

それも一度ではなく、何度も何度も鳴り響いた。

急いで私たちの家族は外に向かい、何が起こっているのかを確認した。

そこにあった光景はまさに地獄絵図といっても過言ではなかった。

辺り一面に火が放たれており、村の家の幾つかは燃えていた。

その程度ならよかったが、本当の地獄はここからだった…


「助けてくれ…頼む」


その声がする方向に目を向けると…

そこには、刀を持った黒い集団が現れていた。


「なっ…何あの集団…」


私たち村人全員そう思った。

そんなことを思うまもなく黒い集団は私たちに襲いかかってきた。


「に…逃げろ!」


この言葉を合図に私たちは走り出した。

だが、黒い集団は人間離れした身体能力を駆使し村人達を捕らえ始めた。


「は…離せ!」


村人の一人が捕まった。


『お前に一つ聞きたいことがある…『雪鬼』の後継者はどこだ?』


黒い集団の先頭に立っていたその人物はそう聞いていた。


「雪鬼など、知らぬ」


『嘘を付くな、お前らの村名は雪鬼村だろ?、しかも長老のお前が知らないはずないだろ…この村の言い伝え…』


「余所者の貴様らがなぜそれを知っている…」


長老と呼ばれた男は少し怯えながらそう聞いた。


『それはな…俺がこの村の出身者だからだよ』


「貴様の声…貴様まさか…」


『久しいな爺さん、さてとあんたは知らないようだからな。面倒くさいが、一人一人殺してやるよ』


「なっ…まて…それは止めろ…」


『<凍りつけ>』


そして長老は凍りついてしまった。

それが合図となり、村人達は一斉に悲鳴をあげた。


「キャァァァァァァァァァァァァァァ…」


それでも彼らは村人達を捕まえ同じ事を聞いて回った。

数分後…


『これで全部か?』


「はい…どうやら誰も『雪鬼』のことは知らないようで…」


先頭に立っていた人物は回りに部下を集め、話し合いをしていた。

その時、私と私の両親は物陰からその様子を見ていた。


『やれやれ…無駄足かよ…もういい…

<凍りつけ>』


次の瞬間、捕らえられていた村人50人が一斉に凍りついた。


『<砕け散れ>』


そして、粉々になっていった…



私たちはその光景を目にしたとたん逃げたした。

この村の周りは山で囲まれており、地元の人間でないと知らないような道が多いので私たちはそこから逃げることにした。

だが、運が悪く私たちのつけた足跡が奴らにバレてしまった。

そして私たちは崖に追い込まれてしまった。


『やれやれ…まさか最後の生き残りがな…』


「あなた達の目的はなに…」


母が勇気を振り絞りそう聞いた。


『俺たちの目的は『雪鬼』の後継者を見つけることだよ』


「雪鬼ってあの…伝説の…」


雪鬼という言葉に父が突然反応した。


『知ってるのか?』


「いや…村の言い伝えでしか聞いたことがない…」


『そうか…残念だ…知っていたならせめて家族のよしみで助けてやろうと思ったけど残念だよ父さん、母さん…』


するとその人物はフードをとり、素顔を露にした。


「彰兄さん…」


私は、その素顔をみて驚いてしまった。

かつて、上京するため村を出ていった時の面影はもはや無くなっていた。


「なぜ…お前が…」


私たちはみな、驚いていた。私たちの知る彰兄さんは虫を殺すことでさえも躊躇うようなそんな優しい男だったからだ。


「さぁ…とにかく『雪鬼』について何も知らないようだからな…残念だよ…母さんの手料理が食べれなくなるのは」


そして、刀を抜き、両親の首をはねた。

二人の体から吹き出る血の感触を味わいながら私は、自分に迫る死の恐怖を感じていた。

それと同時に激しい怒りと憎しみが込み上げてきていた。


「中条様…そろそろ奴らが来ますよ」


部下の一人がそう言った。


「そうだな…さてと、あゆ…そろそろお兄ちゃんは行かないと行けないからお前も逝ってくれ…」


彰兄さんは手に持っていた刀で私の腹部を突き刺した。


「に…兄さん…」


刀を抜かれそのまま谷底へと蹴り飛ばされた。


「バイバイあゆ…」


そして彼らは去っていた。

そのまま谷底へと落ちてしまったが、不幸中の幸いで地面が雪で積もっており落ちた時の衝撃をほとんど雪が吸収してくれたのだ。

だが、腹部の出血はどうすることも出来ない。

どんどん流れていく血を見て私は私の死を感じていた。

けれど、不思議と怖くはなかった。

死への恐怖より、今は兄への憎悪の方が大きかった。


「彰兄さん…お前が…憎い…死ね…死ね…死ね!」


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…

頭の中がこのことで埋め尽くされていった。

そしてその瞬間は訪れた。

突然、辺り一面が真っ白な雪の世界へとなってしまった。

先ほどまで吹いていた吹雪が止んだのかと思うくらい静かな世界だった。

すると、私の背後に白い靄が現れた。

それはそのまま人の形を型どり始めた。


『はじめまして…』


その靄は自分に話しかけてきた。

その声はとても綺麗な女の声だった。


「はじめまして…」


『あなたの憎悪、素晴らしいは…流石私の後継者に選ばれただけあるわね…』


「あなたは何者…」


『私には名前何てものは無い…けれどあなた方は私のことを『雪鬼』と呼ぶわね』


つまり彼女は私の村の言い伝えの『雪鬼』なのだ。


『さてと…あなた…復讐するの?』


「するに決まってるでしょ…絶対に殺してやる」


『やっぱり彼の言うとおりね、人間の憎悪は醜く歪んでいるから格別ね…』


「そうね…歪んでいる…けど、兄ほどではない」


『まぁ…そんなこと私には関係ないけどね。

私の力を使いたい時はあなたの負の感情を私に喰わせなさいそしたら力をあげる』


すると、彼女は腹部に手を突き刺してきた。


「な…何を…」


『傷を治してあげる…だってその方が面白そう…』


そして、私は意識を戻した。

戻した頃には既に夜が明けており、吹雪も止んでいた。


「中条彰…必ず私が殺してやる…」


そのまま私は歩き出した。



そして四年の月日が流れ彼女は高校一年生となっていた。

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